第88話
「何だ、今のは?」
龍衛と巳之助は耳を押えながら顔を見合わせた。巳之助が龍衛に向かって首を傾げる。龍衛が舌打ちして身を翻す。
「何か知らんが気色悪いな。おい!引き上げるぞ!」
と手下どもに怒鳴った。
「え?でも蔵にはまだまだ金目の物が残ってますぜ?」
不満気に言い募る者に龍衛が手を振る。
「捨て置け、捨て置け。命の方が大事だ。どうもこの集落は気色悪い。あの三吉とか言う野郎に乗せられて来ちまったがもっと慎重にやるべきだったな」
へえ、と龍衛の言葉に間抜けな返事を返す。
さっさと引き上げ始めた頭目の後を不承不承手下どもが付いて行く。ひとりが後ろを振り返って、惜しいなあ、とぼやく。その顔を集落を焼く炎が照らした。
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