第84話
「保奈様!」
平治が飛び込んで行くと保奈は玉兎を庇う様に覆いかぶさっていた。
「ご無事で?」
保奈は玉兎を抱きしめながら頷く。玉兎は耳を塞いで目も閉じている。
「平治さん、今のは?」
平治は首を振った。
「とにかく若犬のところへ」
と平治が手を差し伸べた。その手を一旦取ろうとした保奈だったが、一瞬思案顔をした後、意を決した様に立ち上がった。
「玉兎を頼みます。怪我をした人がいないか見てきます」
そう言うと保奈は平治の横を擦り抜ける様にして外へ駆け出してしまった。
「保奈様!」
保奈を追う様に戸口まで来た平治は戸外の場景に絶句した。
「こりゃ火の海だ」
慌てて玉兎の元に取って返すと平治は背を見せてしゃがんだ。
「さあ、おぶさんな。怖いんなら目を閉じてりゃいい」
その背中に玉兎がしがみ付いた。
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