第82話

 ひたひたと頬を叩かれて平治は目を覚ました。若犬丸が片膝を付いて枕元にいた。

「何、何だよ」

 と平治が不機嫌な声を出す。若犬丸が口に人差し指を当てる。その仕草を見て平治は急に緊張した。

「どうした?」

 と平治が囁く。若犬丸は夜闇の中で弓を手にしていた。

「すまないが、保奈殿らを起こして来てもらえぬか」

 うんうんと頷くと平治は忍び脚で保奈たちのもとへ向かった。それを横目で見送りながら若犬丸も身を低くして窓外を窺う。

 と、爆音と共に周囲が真昼の様な明るさに照らされた。

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