第79話

 諸侯は息を吞んだ。雅童とその手勢が遅れて参集するのは常の事だが、その異様さが一同を驚かせた。まず数が減っていた。元々少数精鋭の隊ではあったがさらに員数を減じている。しかも全員が満身創痍と言った体だった。雅童までもが、身にこそ疵は負っていない様だが装具がぼろぼろになっていた。

 一体何者が雅童らをこれ程までに、と皆は訝しがった。

 で、ありながら。

 隊の先頭を騎馬で行く雅童の顔には生気が横溢していた。両眼は爛々とし、口元には酷薄な笑みを浮かべている。他の隊の者たちは我知らず後退り路を雅童らに譲るのだった。

「どうしたのだ?その有様は」

 と隆正が問う。

「随分数が減ってはおらぬか?」

 ふん、と雅童は鼻を鳴らした。

「弱い者は死ぬ、それだけだ」

 しかし…、と二の句が継げぬ隆正に雅童が大きな笑みを浮かべて言う。

「巫女狩りは楽しかった。またやりたい」

 隆正は呆れ、そして驚愕した。

「まさかお前、例の巫女と?」

 殺せなかったがな、と言う雅童の顔には悔いよりもむしろ歓喜の色が浮かんでいた。

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