第12話

 師よ、これがあなたへの報いなのですか?己を犠牲にして多くを救わんとしたあなたへの。

 師よ、あなたは高貴なお生まれであると聞いております。望めば安楽な暮らしが

叶ったでしょう。けれどもあなたは全てを捨て、清浄なる神域で神々に仕える道を選ばれました。そして、そこをもまた戦禍や疫病に苦しめられる人々と共にあらんと去られました。

 師よ、それはあなたが授かった「力」故の事なのでしょうか?ならばその「力」はあなたにとって祝福であったのでしょうか?呪詛であったのでしょうか?

 師よ、この由佐は、あなたの歩みを辿ろうと及ばずながら懸命に努めてまいりました。あなたの夢見る世をわたしもまた見てみたいと思ったからです。

 けれども師よ、慈光様よ、あなたの死を目の当たりにしてわたしの心は揺らいでいます。この世にはやはり、あなたによる救済に値しない者たちがいるのではないのですか?

 師よ、わたしにはあなたの理想、あなたの願いを無残にも打ち砕いた者たちを許せそうにはありません。

 わたしは、由佐は、あなたとは違う道を行くことになりそうです。この世を今あるような姿にした者どもを根絶やしにしようと思います。わたしの装束は、返り血に染まるでしょう。

 師よ、お別れです。御恩は忘れません。

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