第10話
手勢は統率を失っていた。ひれ伏し祈る者、ただ茫然自失している者、雅童への忠誠或いは畏れからなお慈光に挑もうとする者…何より若犬丸自身が最早手勢を指揮しようなどと言う意欲を失くしていた。散発的に慈光に仕掛けそして葬られていく者の姿を、夢の中の事の様に眺めているだけだった。
死無常は思案していた。己の法力と巫女の力を天秤にかけ、それがどちらに傾くかを量っていた。ただ一瞬、ほんの僅かな隙さえあれば勝機もあろう。しかし、と死無常は後ろに控えている巫女に目をやった。まだ一度もその力を見せていないがこやつもまた薄気味悪い。
またひとり、手勢が倒れた。
「退け!」
再び慈光が呼ばわったその時だった。
村の娘がひとり駆けて来て、きょとんとした顔で立ち止まりその場の者たちを見回した。あまりの場違いさに皆虚を突かれた体で娘を見た。その視線に怯えたのか、娘は泣き顔になり後じさりをした。
「玉兎!」
娘に手を差し伸べた慈光を見て死無常が動いた。錫杖を振り上げると娘を狙って法力を放った。
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