第7話
若犬丸とその手勢がなだれ込む。結界を破るのは無理と判断した死無常は一時的に一か所だけ通過できる穴を作ったのだ。この場合、一旦結界内に入ると出れなくなるが、その事を死無常は秘した。結界を張った者を始末するしかない、と死無常は思った。どのみち雅童様には逆らえんだろう。
若犬丸も同じ考えだった。村のあちこちで上がり始めた火の手を見ていたが、それらはまるで夢の中での事の様に感じられた。
武器を持った守備隊の抵抗はあったがそれ以外の村人はすでに逃げたようだった。守備隊とは言い条、統率や戦術などと言ったものはなく、ただ場当たり的に抗っているだけだった。一方的で無意味な殺戮と破壊だけがあった。
若犬丸の目は天へと立ち上る黒い煙を追っていた。熱気に煽られた灰がくるくると舞っている。
その時、身辺の気圧と気温が急に下がった様な感覚があった。
「!!!」
先頭を行く手勢が爆発にでも遭ったかのように吹き飛ばされた。礫を含んだ突風が吹き付け、目を潰された者、四肢を抉られた者がいた。若犬丸は咄嗟に防御の姿勢を取ったが、頬を掠めた礫に顔を切られた。死無常はさすがに法力で防いだが呆気に取られた様子で前方を窺っていた。
悲鳴と炎の地獄が静けさに包まれていた。煙が、歯痒い程のろのろと晴れていく。
そして、ひとりの巫女が姿を現した。
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