第6話
若犬丸は手勢を緩慢な歩調で進ませた。それでも隊は目標とする村に辿り着いてしまう。結界が張られているようだ。例の巫女だろう。
「死無常」
若犬丸が呼ぶと、法師がひとり進み出て、法力を放った。しかし、跳ね返され死無常は低く唸った。
「どうした?破れんか?」
若犬丸が問う。
「破れぬとは申しませんが、しばし時間を頂きたいと存じます」
構わん、急きはしない、と答える若犬丸は兵たちに楽にしているように命じた。兵たちは路傍に倒れ込むと目を瞑った。死無常だけが何やら低く呟いていた。
逃げてくれ。死無常の背中を眺めながら若犬丸は思った。結界を張ったということは我々が来る事を気取ったからであろう。ならば逃げろ。
烏が一羽、鳴きながら傾きかけた陽を受けて飛び去った。
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