第4話

 馬上の雅童の目は虚ろだった。唇は渇き、荒れていた。馬の歩みにつれ躰がゆらゆらと揺れる。手綱を握る手は汚れざらついていた。雅童を守るように付き従う兵たちも干からびた枯れ野の様にくすんでいた。

 前方から一騎の武者が砂埃を立てながら駆けてくる。従者の若犬丸だ。隊に合流すると雅童と騎馬を並べ頭を下げた。

「この付近の村に例の巫女がいるそうですが、いかが致しますか?」

 雅童は目だけを動かして若犬丸を見た。

「例の?」

「はっ、救いの巫女と呼ばれる、怪しい術を用いる者のことで御座います」

「若犬丸よ、お前は神仏に仕える者を殺めたことはあるか?」

 雅童が口元を歪めて笑いながら尋ねた。

「いいえ、御座いませんが」

「村ごと焼き払え」

「え?」

「適当な人数を連れて行き村ごと焼き払え」

 若犬丸は唖然として雅童を見た。その様子を可笑しそうに見ていた雅童が言い捨てた。

「神仏など畏るに足らん」

 無言のまま雅童の側を離れると若犬丸は人選をし、隊を離れた。

 雅童は虚ろな目でそれを見送った。 


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