第9話 私ってもしかしていじわる? なの? EP3

何とかギリギリセーフ。もうみんな整列していた。こっそり一番後ろに並んで、その存在の影を薄くさせる。

「よーし! みんな揃っているな。今日は今年初の水泳の授業だ。欠席者は無しと」

山本先生かぁ。水泳部の顧問。


春香は山本先生のこと良く知っているんだよね。だってほとんど毎日一緒にいるんだから。

当たり前と言うか。そう言うところを気にしてもしょうがないんだけど。

でも山本先生スタイルいいなぁ。それにあの大きさはあれは凶器に近い。あんだけ持ち上がっていると、目立つなと言うよりは、あえて目立たせているといってもいいくらい。


「ん、矢田。なんでお前、部活の水着なんだ?」

「ええええっとですね。どうせ着るじゃないですか部活で。それなら同じことで。まっ、いいじゃないですか。先生」


「う――ん。まぁなんだ、出来ればだな練習用の水着だからまだいいんだが、普通の授業の時は授業用の水着を一応つけろ。お前だけそのハイレグは目立ちすぎだ」

「あっそうですか? でもこれ競泳用だから仕方ないじゃないですか。私はいつも着ているから気にしませんけどね。それに男子がいるわけでもないんで」


あれれ、やっぱり春香、先生につつかれている。ごめんね春香。私のために。


「んっもぉ先生、春香見せつけたかったんですよ。このナイスバディを!! あっ、もしかして先生に張り合いたかったのかな?」

「ふぅーん。そうなのか矢田?」


「いやいや、そんなめっそうもない。先生のその綺麗なお体に、私なんて太刀打ちできないでしょ。実際」

「そんなこと言ったって私には通用せんからな!! まぁいい、それじゃぁまずは準備体操からだ!」

一番後ろで小さくなって春香と山本先生の話を聞いていたが、あの山本先生を相手にさらりと何とかさせてしまうところは春香の人徳なんだろう。


ピッピッと先生が吹く笛の音とともに準備体操がはじまった。

いち、に、さんし……。


体を伸ばしたりねじったり、そのたびに「んっ!」と気になる部分が……。

あっ! な、なにこれ。ちょっとどころじゃないじゃない。


体をひねればその分胸のカップのところががばがばと隙間が空いている。

前かがみになれば、ぱっくりと中身が見えている。

うそ、うそ。こんなにも私って無いの? 春香ってこんなにもあるの?


ただ立っている分には問題はない……た、たぶんだけど。

うううう! 恥ずかしいよりなんか情けないというか、悔しいというか。……ああ、もう何とかなんないのかぁ。

それにさ、は、恥ずかしいていうのはね。


見えちゃいそうで、ということじゃなくて、た、確かに見えちゃうのも恥ずかしいよそりゃ。

それよりも今のこの……状態がね。まずいのよ。

しかも、こういう状態で、動くと、がっちりハマってくれているといいんだけど、動くと、動くと……こすれて、とにかくやばいんです。


「どうしたの優奈?」

「へっ?」

「へっ、じゃなくてさ。なんか変だよ。顔赤いし。体調悪い?」

ブルブル。「わ、悪くなんかないよ」

「じゃぁ、一緒に泳ごうよ」


「あ、いや、私……その」

「そのって?」


ああ、春香の笑顔がまぶしい。で、水着で押し付けられたように、窮屈そうな胸のあたりに目がどうしてもいってしまう。



ああ春香ぁ。抱きしめてぇ――!! 

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