第80話 愛乃の下着を脱がして上げる
透の内心を見透かしたように愛乃が言う。
「これは別にエッチなことじゃないよ。ただのお着替えだから」
「い、いや異性と二人きりで着替えとか、普通は問題じゃない?」
「裸だって見せあったのに今更じゃない?」
「それとこれとは別問題というか……」
「だいたい、わたしのパンツを見ようとしたくせに」
さっきのことをまだ根に持っている(?)らしい。
いや、それは全面的に透が悪いのだけれど。
「愛乃さんだって恥ずかしいんじゃない?」
「わ、わたしは透くんになら……見られても平気だもん」
そう言うと、愛乃はばさりとカーディガンをベッドの上に脱ぎ捨て、それからブラウスのボタンを外し始める。
白い胸の谷間がちらりと見えて、透は慌てて目をそらし、後ろを向く。
「透くんの方が照れてるじゃん」
「それは愛乃さんがいきなり服を脱ぐから……」
「さっきパンツを見ようとした仕返しなの」
「仕返しというかご褒美にしかならないけど……」
「もうっ、透くんのエッチ。それならこっちを向いて?」
そう言われても、愛乃の言うとおりにすれば完全に流されてしまう。同じ部屋でもせめて愛乃を見ないようにしないと……。
けれど、透がそのまま服を脱ごうとすると、愛乃が後ろから抱きつく。
背中に柔らかい胸が押し当てられる。しかも、たぶんブラウスは完全に脱いでしまっているようで、ブラジャー越しの感触だ。
「だ、ダメだよ……愛乃さん」
「どうして?」
「エッチなことはしない約束だ」
「そうだね。でも、透くんがその気になれば関係ないでしょう?」
「俺は乗せられたりしないよ」
「どうかな? ね、透くんはわたしの服を脱がしてみたりしたくない?」
「したいと言ったらどうするのさ?」
「わたしは大歓迎」
愛乃はくすくすっと笑った。
(ダメだ……完全に愛乃さんのペースだ)
「それに、わたしが抱きついたままだったら、透くんも着替えられないよね?」
「わかっているなら、離れてくれない?」
「だーめ。それとも、ベッドもあるし……サウナより気持ちいこと、する?」
愛乃が透の耳元でささやく。
その甘い声が透の理性をごりごりと削っていく。
限界だった。それでも、透は耐えようとした。
けれど、愛乃が最後の一撃を加える。
「何もしないの? 透くんの意気地なし」
透は我慢の限界に達した。
振り向くと、愛乃をそのままベッドへと押し倒してしまう。
愛乃が驚いたように目を見開き、そのままベッドに倒れ込む。
「きゃああああっ」
愛乃が悲鳴を上げる。下着姿の愛乃が透の下に組み敷かれる。
「と、透くん……ひゃうっ」
透の手が愛乃の下着にかけられる。愛乃は……涙目で透を見上げていた。
「本当に脱がしちゃうけど、いい?」
「透くんがそうしたいなら……」
愛乃はちょっと怯えたように透を見上げていた。
透はその愛乃の表情を見て、すっと心が冷静になるのを感じた。
そして、ため息をつく。
「怖がっているのは愛乃さんの方じゃない?」
「ち、違うもん。怖くなんていないし、透くんにだったら何をされても……いいの」
「じゃあ、本当に脱がすよ」
「う、うん……」
愛乃がドキドキした様子で目をそらす。透は愛乃のスカートの下に手を突っ込んだ。
「ひゃっ! そ、そっち?」
「脱がしてほしいんだよね?」
「そ、そうだけど……パンツからなんて透くんの変態」
愛乃がくすぐったそうに身をよじる。太ももの付け根のあたりに透の手が当たる。愛乃の身体は熱を帯びていた。
そのままショーツを脱がしてしまう。つまり、スカートの下は一糸まとわぬ状態なわけで。
愛乃はすごく恥ずかしそうだった。
次に透はブラを手に取った。そして、そのホックを外してしまう。
愛乃の白い胸が目の前にさらされる。桜色の突起がツンと立っている。
興奮したように、愛乃の肌は赤く染まっていた。
愛乃が目をぎゅっとつぶる。
「透くんが……わたしの身体を好き放題するんだ」
愛乃がそんなことをつぶやく。透はごくりと息を飲む。この美少女を好き勝手に欲望のまま扱って、子供ができるようなことをしたら、と想像してしまう。
けれど、そのつもりはない。
透は愛乃の髪をそっと撫でる。
愛乃が「え?」という表情で目を開く。
「あとは自分で着替えよっか?」
「えっ、ええ!? 何もしないの!?」
「何もしないって最初から言ってます……」
「そ、そんな透くん……! 期待させるだけさせて……何もしないなんてひどいよ!?」
「愛乃さんってやっぱり痴女だよね……」
「痴女じゃないもの!」
むうっと愛乃が頬を膨らませる。愛乃が透にエッチなことをサれたいと思っているのは本心だけれど、同時にたぶん怖いとも思っているのだろう。
愛乃は普通の女の子で、経験もないのだから。それは透も同じだけれど。
透はベッドから離れると、愛乃の胸ではなくて目を見る。
「俺はさ、愛乃さんといろんなことを一緒にできたらいいなって思ってるんだよ」
「いろんなこと?」
「そうそう。エッチなことだけじゃなくてさ、サウナもそうだし、一緒に料理したりとか、お出かけしたりとか。……俺も男だからエロいことには興味があるし、それで頭が一杯になることもあるけど、それだけが俺の望みじゃないんだよ」
透は自分の頬が熱くなるのを感じる。恥ずかしいのだ。
愛乃が驚いたように目を見開く。そして、ふふっと笑った。
「そっか。わたしも同じ。透くんといろんな楽しいことをしたいな。もちろんエッチなこともね。でも……わたしは透くんと一緒にいるだけで楽しいよ?」
「俺がいることで愛乃さんが少しでも楽しい気持ちになれるなら、嬉しいよ」
「透くんは?」
尋ねられて、透は自然と笑みが顔に浮かぶ。
「もちろん、俺も同じだよ」
<あとがき>
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