第68話 カラオケの狭い部屋での女子二人の密着バトル!
女子大生っぽい店員は「両手に花ね」なんてささやく。それにしても、近衛家の秘所の時枝冬華に少し雰囲気が似ている気がする。
二十代後半の大人な美人の冬華と違って、どちらかといえばまだ少女という雰囲気だし、他人の空似だとは思うけれど。
「それではカップル割引を二人に適用して、残り一人は通常料金ということで承りました」
「だ、誰がカップルかは決めなくてもいいんですか?」
「そんな修羅場製造装置みたいなことはしませんよ」
考えてみれば、当たり前で誰をカップルとして申請しても料金は変わらないし、店としてはどうでもいいだろう。
愛乃も知香もちょっと恥ずかしそうに赤面する。
店員はぽんと手を打つ。
「それに、そんなにカップル対決したいなら、いい方法がありますよ」
「え?」
「キミが女の子一人と交互にデュエットを組んで、高得点を出した女の子が勝ち、とか面白そうだと思いません?」
「そ、そうですか……?」
「相性バッチリなのはどちらかわかります」
からかうように彼女は言う。本当に冬華そっくりで、彼女が言いそうな冗談だ。
透たちは店員に渡された番号札の部屋へと向かった。途中でドリンクバーで飲み物を取ったけど、透がジンジャーエールを選んだら、愛乃も知香も同じジンジャーエールを選んだ。
おそろい、ということなのだろう。二人の対抗意識が強い。
部屋はこじんまりしていたけれど、きれいな赤い椅子の部屋だった。真ん中にテーブルがある。
透が腰掛けると、愛乃が右隣にぴったりとくっついて座る。腰とお尻が密着状態になっていた。
「あ、愛乃さん……ちょ、ちょっと近すぎじゃない?」
「あー、透くん。照れてるんだ?」
「照れてなんかいないけど……」
「じゃあ、わたしをハグする?」
ふふっと愛乃が笑うけれど、彼女も顔が赤い。やっぱり恥ずかしいのだろう。
一緒にお風呂に入って、隣で寝ても、全然慣れない。愛乃がすぐ隣にいるのは……透にとって刺激的すぎた。
ついスカートからちらりと見える、愛乃の健康的な白い太ももを見てしまう。
愛乃もその視線に気づいたのか、小首をかしげる。
「それとも……わたしの脚を触る?」
「え? い、いや、そんなことしないよ」
「そう……。わたしの脚、魅力的じゃないんだ……」
がっかりしたように愛乃が言うので、慌てて透は「実は触りたいと思っていたんだ!」と自白してしまう。
すると、愛乃が「やっぱり!」と顔を輝かせた。
(は、はめられた気がする……)
「ふふっ、どうぞ」
愛乃が少しスカートをはだけさせて、膝の上のかなり大胆な部分まで見えてしまう。
いろいろとぎりぎりだ。
「これ以上はショーツが見えちゃうから……我慢してね?」
「い、いや、誰もめくってほしいなんて言ってないよ!?」
「透くんの目がそう言っている気がするの」
図星だったけれど、そうだとは口が裂けても言えない。
もし知香がいなければ、実際に透は愛乃の脚に触っていたかも知れない。
ところが、それを見て対抗心を燃やしたのか、知香もためらいながらも透の左隣にぴたっと密着して座った。
愛乃と同じように、腰やお尻が密着して、知香の身体の温かさを感じさせる。
そして、知香がきっと透を睨む。
「さ、触るなら私にしなさいよね!」
「え、なんで……?」
「愛乃さんばかりにえっちなことをしたら、透が我慢できなくなっちゃうでしょ? だ、だから、私が代わりに……」
知香の声はしだいに小さくなる。
その様子を見た愛乃が、「どっちの太ももを触るの?」と問いかける。
そんなことはしない、と言いかけた。だが、「選ばない」ということ自体が、愛乃からしてみれば不満かもしれない。
やっぱり、透は知香に未練がある、と。
透は考えた末、愛乃の脚を服の上からそっと触った。
愛乃はびくんと震え、「ひゃうっ!」と甲高い声を上げた。
「ごめん。でも、そんなに驚かなくてもいいのに……」
「だ、だって、透くんのことだから、選ばないって言うと思ってたから……」
「じゃあ、さっきまでの挑発は本気じゃなかったの?」
「……違うよ。本当に透くんが触ってくれたら良いなって思ってた」
愛乃は恥ずかしそうにそう言う。
その言葉で透もドキドキしてしまう。
さわさわと愛乃の脚を触ると、愛乃が「んっ」と目をつぶって、甘い声を出す。
「透くんがしたいなら、やっぱり……もっと奥まで触っていいの」
愛乃は指先で下腹部を示す。
互いに顔を真っ赤にして見つめ合う。
が、もちろん、そんなことを知香が許すはずがない。
「だ、ダメなんだから!」
知香が隣から割って入って透の手を愛乃からどかそうとする。
ところがそうすると、透の目の前を知香の上半身が近づく形になる。
自然と知香の大きな胸がゆさゆさと揺れ、さらに体勢が変わると透の身体に当たる形になる。
知香はそのことにまったく気づいていないらしい。
透は慌てて愛乃から手を放して知香を止めようとするが――。
その拍子に、知香の胸を手で触ってしまう形になる。ブラウスの上から形の良い胸の質感が伝わってくる。
知香は「えっ」と声を上げて、フリーズした。透は慌てて手を放したが、もう遅い。
「わ、わざとじゃないんだ!」
「わかってるわ……」
知香が怒るかと思いきや、「透が私のことを触ってくれた……」なんてつぶやいて、顔を真っ赤にしている。
愛乃は愛乃で頬を膨らませて「ずるーい! わたしのおっぱいも触ってくれないと不公平だよ」なんて言い出した。
そして、透は気づいた。
「カラオケに来て、歌を歌わないともったいない気がしない?」
愛乃と知香は顔を見合わせて、こくんとうなずいた。
<あとがき>
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