第55話 誰が真ん中で寝る?
結局、透と愛乃と知香の三人は同じ寝室で一緒に寝ることになった。ダブルベッドはかなり大きなサイズだし、三人並んで寝ることもスペースとしては問題ない。
問題があるとすれば、それは透がドキドキして眠れないかもしれないことだった。
昨日、愛乃と二人きりで寝たときよりも緊張する。
二人の少女を透はちらりと見た。金髪碧眼の小柄な美少女で、黒髪ロングの清楚な美人が、二人とも無防備な寝間着姿で夜中に一緒の部屋にいる。
愛乃は薄手のピンクのネグリジェで、知香は薄い青色のシャツパジャマを着ている。
愛乃と知香の三人は、顔を見合わせて、そして頬を赤くした。高校一年生の男女が同じベッドで寝るなんて、本当ならありえない。
知香が小声で、恥ずかしそうに言う。
「昔は……私と透、一緒のお布団で寝たりしたよね」
「昔はね」
透と知香は、幼なじみで婚約者で同じ家に住んでいた。だから、一緒の布団で寝たこともあるけれど、それは子供だったときのこと。
今は、もう互いに異性だと意識している。
愛乃が小さく首をかしげる。
「真ん中に寝るのは……誰にしよう?」
三人で横に並んで寝るということは、誰かが他の二人に挟まれて寝ることになる。
知香がふふっと笑って、胸に手を置いて自信たっぷりな表情になる。
「私が中央で寝れば、あなたたちがエッチなことをするのを阻止できるわ」
そういえば、透と愛乃がエッチなことをしないように監視する、というのが知香の目的だったはずだ。
愛乃がちょっと驚いたような表情になり、青い目でまじまじと知香を見る。
「本気でわたしと透くんのことを監視するつもりだったんだ?」
「何度もそう言っているじゃない!」
「近衛さんも、透くんにそういうことをしてほしいから一緒のベッドで寝るんだと思ってたけど」
「違うってば!」
「ふうん。でも、いいの? それなら、近衛さんが真ん中だと不都合なこともあると思うけど……」
「え?」
「透くんが近衛さんと密着して寝ていて、エッチな気分になったら、襲われちゃうのは近衛さんだよ?」
そう言われて、知香はかあっと顔を赤くした。知香が中央で眠れば、透と愛乃の接触は断てるかもしれないけれど、透と知香は隣り合わせのままだ。
もちろん、透は知香を襲ったりするつもりはない。けれど、愛乃はくすっと笑った。
「近衛さんにとっても、透くんに抱きついたり、キスしたりし放題だから良いのかも」
「そ、そんなことしたりするつもりはないの! それに、私が透に変なことされそうになったら、リュティさんが止めなさいよ!」
「どうしてわたしがそんなことするの?」
「だ、だって……」
知香は言葉に詰まった。知香は勝手に透と愛乃を監視しに来て、自分からベッドで寝るわけで、愛乃が知香を助ける理由はない。実際には、愛乃は透の婚約者だから止めるとは思うけど……。
言い争う愛乃と知香の胸が、話すたびに軽く揺れていることに気づいて透は動揺した。
薄手の寝間着だから、胸の動きがはっきりとわかる。もちろん、透は愛乃にも知香にもここで何もするつもりはない。けれど、あの胸を押し付けられて、冷静でいられるだろうか、透は思った。
愛乃はいたずらっぽく知香を見つめる。
「気づいている? 透くんにエッチなことをされたら、近衛さんは逃げられないよ」
「そ、それは……」
「薄着でベッドの中に一緒に入って、男の子に抱きついて寝たら、襲われたっておかしくないし、どこにも逃げ場はないもの。それでも、近衛さんは透くんとエッチなことをしたくないって嘘をつくの?」
「う、嘘じゃない。で、でも……透とリュティさんを監視するためなら、ちょっとぐらいなら透にエッチなことをされても許してあげる」
知香は目を伏せて、羞恥に耐えるように小声で言った。
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