第52話 3人でホラー映画!
ご飯を食べ終わって、お茶を飲みながらのんびりしているとき、愛乃がふふっと笑った
「今日はとっておきのものを用意してあるの」
透と知香は顔を見合わせる。
(……なんとなく嫌な予感がする)
知香も同感だったようで、おそるおそるといった様子で愛乃に尋ねる。
「なんか変なものじゃない?」
「……近衛さんって、わたしのことを何だと思っているの?」
「同い年の男の子と裸で一緒にお風呂に入っちゃうような痴女?」
「あっ、失礼だよー。それに、それは近衛さんも同じでしょう?」
「わ、私は違うから!」
「わざわざスク水を用意してまで、透くんと一緒にお風呂に入りたがっていたのに?」
「そ、それは……」
愛乃と知香の言い争い(といってもじゃれ合いみたいなものだけれど)は、知香が劣勢のようだった。
完璧超人の知香も、なぜか愛乃には弱いみたいだ。
話が脱線しそうなので、透は横から口を挟む。
「それで、愛乃さんが用意したものって何?」
よくぞ聞いてくれました、という感じで、愛乃が満面の笑みを浮かべる。
「ホラー映画なの」
「え?」
「透くん、ミステリだけじゃなくて、ホラーも好きって言ってたよね。だから、最近の話題作をレンタルしてきたの」
たしかに、愛乃とはそんな話もしたと思う。
最初に話すきっかけになったのも、本屋のミステリの棚の前にいたことだった。
なんだか、もう大昔のことのように思えるけれど、まだ一週間も経っていない。
(共通の趣味のある結婚相手って、いいよなあ)
透はそんなことを考え、愛乃と結婚することを自然と想像している事に気づき、驚いてしまう。
愛乃はいたずらっぽく、青い瞳を輝かせた。
「それに、二人で家でホラー映画を見るのって、恋人っぽいでしょう?」
そう言われれば、そうかもしれない。
と、知香が透の服の袖を引っ張った。
「私もいるんだけど……」
愛乃がくすっと笑う。
「近衛さんは怖いの苦手?」
「べ、べつに苦手じゃない!」
「なら、近衛さんも一緒に見る?」
愛乃は自然と知香を誘った。
知香は少しためらってから、こくりとうなずいた。
愛乃は積極的に、知香と親しくなろうとしているように見えた。
その意図はわからないけれど、知香がこの家にいるかぎり、しばらくは三人で暮らすわけだから、透にとっても、そうしてくれたほうが良いのは事実だ。
そして、三人は一緒に映画を見始めることにした。
のだけれど……。
この豪邸には、かなり大きな立派なテレビも用意されていて、そこに映画を映し出す。
部屋を真っ暗にして、テレビの前のソファに三人は腰掛ける。
自然と、透の右側に愛乃が、左側に知香が座った。
どきりとする。
(美少女二人に挟まれる格好になるなんて……)
二人と風呂にも一緒に入ったのだから、今更ではあるけれど。
「あっ、透くん、照れてるんだ?」
「透ってば、デレデレしてる……」
愛乃と知香は、ふたりともちょっと楽しそうにそんなことを言った。
<あとがき>
少し更新間隔が空いてしまってすみません……! 今後も定期的に更新していきます!
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