第43話 三人でお風呂

 そして、あっという間に夜になった。

 夜ご飯の前にお風呂に入りたい、という愛乃と知香の希望で、ちょっと早めの時間に風呂を沸かす。


 そして、今、透は一人で、浴槽に浸かっていた。

 昨日、愛乃と一緒に入った豪華な浴場だ。


 愛乃と知香は後から入ってくるらしい。

 たしかに、この広い浴場なら、三人同時に湯船に浸かることも余裕でできるけれど……。


「困ったことになったな……」


 いつも冷静な知香が、愛乃に完璧に乗せられている。

 普段とは異なる行動を、知香が行ってしまう理由はなんだろう?


 透が考えていると、そっと浴場の扉が開いた。


「えっと……透、いる?」


 おずおずとした様子で入ってきたのは、知香だった。

 バスタオル一枚の姿で、恥ずかしそうに透を黒い瞳で見つめている。


 改めて見ると、知香も愛乃と並ぶ学校一の美少女なんだな、と思う。


 すらりとした長身の体は、腰も高くスタイル抜群だ。


 バスタオルの上のなだらかな膨らみから、17歳の女子高生としては、胸もお尻も大きいことが見て取れる。、反対にウェストはほっそりと引き締まっている。


「な、なにじろじろ見ているわけ?」


「ご、ごめん」


「……透とお風呂に入るのって、小学六年生のとき以来だよね。あのときも……透は私のことを変な目で見てた」


「そ、そんなことないよ」


「嘘つき。……あのときはね、でも、それで良かったの。だって、私はあなたと結婚するつもりだったんだもの」


 知香はそう言って、透を見つめた。

 どきりとする。たしかに透は知香の婚約者だった。 


 知香は小声で言う。


「体を流すから、後ろを向いててくれる?」


「わ、わかったよ」


 透は慌てて後ろを向いて、浴場の窓の方を見た。

 後ろで衣擦れの音がして、シャワーの水が流れるのが聞こえる。


 いま、知香は裸で体を流しているのだ。

 どうして嫌いな相手の前で、そんな無防備なことができるのだろう?


 もし透が邪な思いを持っていたら、知香の方を振り向いて後ろから羽交い締めにして、そして押し倒してしまうこともできる。


 知香は、そういう可能性を想像しないのだろうか?

 そうしないと知香が信じているのであれば、それは透のことを、まだ信頼しているということなのかもしれなかった。


 やがてシャワーの音が止まる。

 そして、湯船の水がぱしゃっと音を立てた。


 知香が浴槽に入ったということらしい。

 

(あ、愛乃さんはまだかな……)


 愛乃と知香が火花をばちばち散らしているのも心臓に悪いけれど、知香と二人きりというのはもっと緊張する。


 しかも風呂場でほとんど裸という状況なのだから。


「ねえ、透……もう、こっち向いてもいいよ。話したいことがあるの」


「う、うん……」


 勇気を出して、透が振り向くと、すぐ目の前に知香がいた。

 バスタオル一枚のみを巻きつけた格好だ。

 

 大事なところは隠せているけれど、胸の谷間にどうしても目が行く。

 透は慌てて目をそらそうとして、とんでもないことに気づく。


 知香のバスタオルはかなり薄いようで、水に濡れると……透けてしまうようだった。




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