第四章 学校での婚約者

第29話 ベッドイン?

 透は、愛乃と無事に何もないままお風呂から上がった。


(いや、何もなかったとは言えなけれど……)


 愛乃に裸で抱きつかれ、胸を触り、抱きしめてしまった。

 それ以上のことはしなかったけれど、何もしなかったとは到底言えない。


「わたし、いろいろされちゃったから、もうお嫁には行けないね?」


 愛乃がいたずらっぽくささやき、透はどきりとする。

 愛乃は薄手のピンクのネグリジェを着ていた。


 寝室のベッドの上に腰掛け、白い足をぶらぶらさせている。


 透は立ったまま、愛乃の艶やかな湯上がり姿を見て、どきりとする。


「でも、わたしは透くんのお嫁に行けるものね?」


 愛乃は小声で言う。

 透はますますうろたえ、頬が熱くなるのを感じた。そういう愛乃も顔が赤い。


「婚約者だから、そ、それはそうだけど……そもそも、お嫁にいけないようなことは、していないよ……」


「わたしの胸を揉みしだいたくせに。……興奮した透くんは、ちょっと可愛かったかも」


 愛乃はふふっと笑う。

 そして、愛乃はぽんぽんとベッドの上の自分の隣を叩いた。


「透くんも座ってもいいんだよ?」


「ああ、えーと……」


「もしかして、わたしのことを意識して、恥ずかしがってる?」


「意識させるようなことを、リュティさんがするからだよ……」


「呼び方は『愛乃』、でしょう?」


「そうだったね、愛乃さん」


 透が言い直すと、愛乃はぱっと嬉しそうな顔をした。

 そんな可愛い笑顔をするのは、反則だ。

 

 その笑顔を見ていると、愛乃の願いはすべて叶えたくなってしまう。


 透はそっと愛乃の隣に腰掛けた。

 どのみち、愛乃と一緒のベッドで寝るのだから、隣に腰掛けるぐらいで恥ずかしがってるわけにはいかない。


 とはいえ、ふたりとも寝間着姿で、ベッドに並んで座っていると、完全に恋人同士のような雰囲気になる。


 透が隣の愛乃をちらりと見ると、ネグリジェ姿の愛乃はきれいな肩が露出していて、か胸の上の方と谷間も見えている。


 透の視線に気づいたのか、愛乃が顔を赤らめる。


「透くん……やっぱりエッチな目でわたしのことを見ているよね」


「ご、ごめん」


「いいの。だって、そのために、わたしはこのネグリジェを選んだんだもの」


 愛乃の言葉に、透は驚いて愛乃の青い瞳をまじまじと見つめた。

 恥ずかしそうに、愛乃が視線を外す。


 つまり、愛乃は透を……誘惑しようと思って、そういう寝間着を選んだということだろうか。


「に、似合ってるかな?」


「す、すごく可愛いと思うけど……」


 金髪碧眼のスタイル抜群の美少女が、薄手のネグリジェのみを羽織っているというのは、透にはあまりに刺激が強すぎた。

 もっと、普通のパジャマでも、愛乃は可愛いと思うけれど。


 愛乃が嬉しそうに微笑む。


「良かった……透くんに可愛いって言ってもらえるのが、一番嬉しいもの」


 そして、愛乃がそっと透の手に、小さな手を重ねる。その手の温かさに、透はうろたえた。


「あ、愛乃さん……」


「透くん……すごくどきどきしてる」


「愛乃さんのせいだよ……」


「わたしがエッチだから?」


「愛乃さんが可愛いから」


 透がそういうと、愛乃もどきりとした様子で目を泳がせた。


「わ、わたしのせいで、透くんがどきどきしているなら……嬉しいな」

 

 そして、愛乃は恋人のように透の手の指に、自分の指を絡めた。

 そして、甘い声でささやく。


「婚約者がベッドの上ですることと言ったら、一つしかないよね?」


「眠ること、だよね?」


 透がわざとそう言うと、愛乃は頬を膨らませて、透を睨む。

 そんな表情をしても可愛いなあ、と透は思ってしまう。


「透くんの意地悪。もう一つあるよね?」


 愛乃が甘えるように、透の肩にちょことんと頭を乗せ、しなだれかかる。

 その金色の髪がふわりと揺れた。


「あ、愛乃さん……あまりそういうことをされると……嬉しいけど……本当に襲ってしまいそうになるから……」


「透くんがそうしたいなら、襲ってくれてもいいんだよ? ……お風呂の続き、ここでする?」


 愛乃は透に体重を預けたまま、小さな声で透に問いかけた。







<あとがき>

愛乃がどうなるか、続きが気になる方は……


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