第28話 次はキスだよね

 同じ浴槽の中の愛乃は、バスタオル一枚のみの姿で、透と一緒にいた。

 そして、ついに透は、愛乃のバスタオルに手をかけてしまった。


 もともとタオルの丈が短すぎて、愛乃は脚も胸も十分に隠しきれていなかった。

 けれど、それでもタオルがなくなれば、愛乃の白い肌は、すべて透の前にさらけ出されることになる。


「れ、連城くん……ひゃうっ」


 透が愛乃の胸を覆うタオルを剥ぎ、大きな胸がこぼれるように露わになる。


 愛乃はかあっと顔を赤くした。愛乃は反射的に手で胸を隠そうとしたようだが、それより速く、透は愛乃の胸を正面から直接触ってしまった。


「あっ、は、恥ずかしいよ……連城くんっ」


 愛乃のきれいな声は、もはやどこか遠い世界のことのように感じられた。 

 その小さな赤い唇も、白い脚も、透の好きなようにできる。


 愛乃も周囲もそれを認めている。

 なら、何も遠慮することはない。


 愛乃は透に胸をまさぐられ、「あっ、んんっ」と甘い声であえいでいる。


 愛乃も透にそうされても良いと言った。妊娠してもいいとすら言ったのだ。

 だから、これは愛乃の望んでいることで……。


 透は、両手におさまらないほどの愛乃の大きな胸を触りながら、そのお尻にも手を伸ばそうとする。


 愛乃のバスタオルはすべて剥ぎ取られている。

 透も愛乃も全裸だった。


 愛乃は浴槽の隅に追い詰められていて、その白い肌を朱に染めている。

 このままだと、確実に間違いが起きる。


 それでも透は止められなかった。


 その瞬間、愛乃がびくっと身じろぎする。

 透は、愛乃の下半身に伸ばしかけていた手をぴたっと止める。


 愛乃は青い瞳を潤ませ、そして、怯えるように震えていた。

 その愛乃の目を見て、透は一気に冷静になった。


 そして、自分のしたことを思い出し、うろたえた。

 完全に理性を失っていた。


「ごめん、リュティさん。怖かったよね?」


「え……? ぜ、ぜんぜん、そんなことないよっ! 連城くんの好きにしていいって言ったのは、わたしだし」


「でも、リュティさん、怖がっていた」


「違うもの! わたしは連城くんに何をされても平気なの。だから……」


「俺と婚約者でいたいから、無理をしていたんじゃない?」


 透がそう言うと、愛乃は口ごもった。

 図星なのだろう。


 無理やり関係を結べば、たしかに透と愛乃の婚約はより強固なものになる。


 愛乃からしてみれば、婚約を解消されるのは、家の事情で死活問題だ。

 だから、こういう大胆な行動に出た。透に何をされても良いと言ったし、妊娠する覚悟もあると言った。


 それはすべてが嘘ではないのだろうけれど、でも、心の準備ができているかどうかは別問題だ。

 透と愛乃は彼氏彼女ではないし、透が愛乃に告白したわけでもないのだから。


 愛乃は一糸まとわぬ姿で、青いサファイアのような瞳で、透を上目遣いに見る。


「連城くんは優しいよね。……怖かったのは本当だよ? だって、わたし……初めてだもの。でも、わたしが透くんに何をされてもいいって言ったのも、妊娠してもいいって言ったのも、嘘じゃないの」


「ありがとう」


「だから、ここで、わたしを連城くんのものにしてくれてもいいんだよ?」


 愛乃はそう言って、挑発するように透を見つめた。


 裸の金髪碧眼の美少女は、魅力的で、また冷静さを失いそうになる。

 けれど、透は首を横に振った。


「そういうことをするのは、俺が本当にリュティさんを大事にできると思ったときで、リュティさんが本当に俺のことを大事に思ってくれたときでいいよ。こんなことをしなくても、俺はリュティさんの味方だから」


 透の言葉に、愛乃ははっとした表情になり、そして、嬉しそうに微笑む。


「ありがとう……やっぱり連城くんは優しいよね。だから……」


 愛乃はそのまま正面から透に抱きついた。透はどきりとする。


(せっかく冷静さを取り戻したのに……!) 


 愛乃の大きな胸も柔らかいお腹も白い脚も、すべてが透に密着していた。

 そして、愛乃は耳元でささやく。


「今日はこれで許してあげる。代わりにね、お願いがあるの」


「な、なに?」


「下の名前で呼んでほしいな。わたしたち、婚約者だもの。いつまでも他人行儀なのは嫌だよ?」


「えーと、でも……」


「聞いてくれないと、放してあげない」


 このまま、ずっと密着されたら、透の努力は無駄になる。

 透は降参した。


「わかったよ、愛乃さん」


「呼び捨てでもいいのに。でも、ありがとう……透くん」


 愛乃はそう言うと、ちゅっと透の頬にキスをした。その柔らかい感触はとても心地よかった。

 透がびっくりしていると、愛乃はいたずらっぽく、恥ずかしそうに微笑む。


「次はね、透くんが、わたしの唇にキスしてくれるように……頑張るから」


 愛乃はそう言って、幸せそうに透に身を委ねていた。


 いずれ、透は愛乃なしではいられなくなるかもしれない。そのぐらい、愛乃が大事な存在になってしまうのが怖かった。

 失うことの恐怖と絶望を、透はよく知っていた。


 でも、今は……そんな心配より重要なことがある。

 目の前の愛乃のことが、透には愛おしかった。


「俺も、愛乃さんのことを守れるように、頑張るよ」

 

 そして、透は愛乃を抱きしめ返し、その金色の美しい髪をそっと撫でる。

 愛乃はとてもうれしそうな表情を浮かべ、透にますますぎゅっと抱きついていた。











<あとがき>

これにて第三章は完結です! 今後も透と愛乃の関係は深まっていきます。同時に、次章は幼馴染の知香やクラスメイトの明日夏が再登場して修羅場ふたたび……!


面白い!

愛乃が可愛かった!

透と愛乃や、知香・明日夏たちの関係がどうなるか気になる……!


と思っていただけましたら、


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