第27話 お風呂のなかの愛乃

 バスタオル一枚のほとんど裸の愛乃が、透の後ろからぎゅっと抱きついている。

 そして、透に、自分の胸を触っても良いと、悪魔のような、魅力的な提案をささやいていた。


「連城くんが望むようにしていいの。それがわたしの望みだもの」


 愛乃が甘えるように、そう言う。

 透は焦った。


 このままでは愛乃に流されてしまう。一度その提案を聞いて胸を触ったら、行くところまで行ってしまうだろう。

 お互いほぼ裸なのだから。


 ブレザーの制服姿で、お腹を大きくして、「透くんの子どもだよ?」と妖艶に微笑む愛乃を想像してしまう。

 透はくらりとめまいのするような感覚に襲われた。


 そうなるわけにはいかない。


(……でも)


 愛乃は、透にそうしてほしいと望んでいる。胸を触っても、もっと恥ずかしいことをしても、愛乃は受け入れてくれる。


 そして、透は、愛乃に言ったとおり、健全で馬鹿な男子高校生なのだった。

 透も、愛乃のような可愛い女の子と、そういうことをしたくないといえば、嘘になる。


 周囲の状況も、それを認めている。透と愛乃は婚約者なのだから。


(胸を触るだけなら、良いかもしれない……)


 原因を作ったのは愛乃で、愛乃がそうしていいと言っているんだから、何も遠慮する必要はない。

 

「えっと、本当にしてもいい?」


「う、うん……連城くんが望むなら」


 愛乃がそっと透の背中から離れる。そして、透は浴槽のなかでくるりと回れ右をして、愛乃を振り向いた。


 愛乃は湯船のなかで、顔を真っ赤にして透を見つめていた。

 水分を吸収したタオルが、ぴったりと体に張り付いていて、体のラインが明らかになっている。


 金色の流れるような髪が、愛乃の体にかかっていて、扇情的だった。

 

 しかも、バスタオルは大きな胸のすべてを隠しきれていなくて、胸の谷間がちらりと透を誘うように見えている。


 愛乃がくすっと笑う。


「連城くんがわたしの胸を見る目……エッチだね」


「そういうふうにさせたのは、リュティさんだよ」


「うん……そうだね」


 愛乃は緊張したように、深呼吸した。その動作で、愛乃の胸が上下して、軽く揺れる。

 透はどきりとした。

 

 あの胸を、これから触るのだ。


(どうしてこんなことになったんだろう……? やっぱり、問題があるのでは……?)


 透の頭の中の理性が、そう問いかけるが、もはや、ほとんど意味はなかった。


 愛乃が両手で、自分の胸に手を添え、そして押し上げるような仕草をする。

 浴槽のなかで、愛乃の胸が誘惑するように形を変えた。


「ど、どうぞ……連城くん。好きにしていいよ?」


「う、うん……」


 タオルの上から、愛乃の胸を両手でそっと触る。


「ひゃうんっ」


 愛乃がびくんと震え、甲高い声を上げる。

 その大きな胸は柔らかくて、心地よかった。


 軽く指に力を入れると、質感の良い胸に指が沈み込む。

 愛乃が「んっ」と恥ずかしがるような声を上げた。


「連城くんは……き、気持ちいい?」


「う、うん……」


 愛乃の言う通り、初めて触る女の子の胸は、透の理性を吹き飛ばしていた。


 自分の無力も、愛乃に対する責任感も、守ってあげたいと思ったことも、すべて忘れそうになる。

 でも、それで良いんだろうか?

 

 透の頭に一瞬そんな考えがよぎったが、愛乃の胸の小さな突起のような感触がそんな考えを消失させてしまった。


 タオルの上からでも、はっきりとわかってしまった。


「れ、連城くん……そ、そこはダメッ」


 愛乃のきれいな声が、どこか遠くで聞こえるような感じがした。


 タオルの上からでなく、直接触ったら……どうだろう?

 透は愛乃のタオルにそっと手をかけ、愛乃は「あっ」と小さな甘い吐息をもらした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る