第24話 透と愛乃の同棲スタート!

 次の日は休日で、夕方ごろに、透と愛乃の二人は目的地に到着した。


 二人は、小綺麗な一軒家の前に立っていた。

 白い壁に、赤い屋根で、ちょっと目立つデザインだ。

 

 新築の家で、2階建て。これが、透と愛乃の同棲生活のために、近衛家が用意した家だった。

 荷物は後から送られてくるけれど、とりあえず今日からもうここに住むことになる。


 二人とも、休みだけれど制服姿だった。急な引っ越しなので、手荷物を最小限にしようとした結果だ。


「二人で住むには少し広いかな」


 透がつぶやくと、愛乃がくすっと笑う。そして、青い瞳で、上目遣いに透を見る。


「すぐに二人ではなくなるかも」


「……子どもを作ったりはしないからね」


「でも、子どもを作りたいって言ったのは、連城くんだよ?」


「言ってないよ。だいたい、リュティさんだって、そういうことをするのは、結婚してからって言ってたよね?」


「そうだっけ?」


「そうそう。俺もバカな男子なんだからさ、リュティさんはもう少し身の危険を感じたほうがいい気がする」


「あっ、連城くん、やっぱりそういうことしたいんだ?」


 ふふっと愛乃が笑い、そして言ってから恥ずかしくなったのか、頬を赤く染める。

 透も自分が赤面するのを感じた。


「と、とりあえず、入ろうか」


 透が早口で言うと、愛乃もこくこくとうなずいた。


 少し緊張する。

 まるでRPGのダンジョンにでも挑むかのような感覚だ。


 透が鍵を開けて、そして玄関の扉を開けて、愛乃を招き入れる。


「ありがとう……連城くんは優しいね」


「普通のことだよ」


「そうかな」


 玄関の壁のスイッチを押して、明かりをつける。

 LEDの電灯だ。


 玄関もおしゃれで上品な雰囲気だった。高校生カップルには贅沢な家な気もする。


 とはいえ、大財閥の近衛家が用意した家だから金がかかっているのは当然だし、そもそも透と愛乃は婚約者であっても、カップルではないのだけれど。


 愛乃は廊下に立つと、ふふっと笑った。


「一度やってみたかったの


「何を?」


「あのね……ごはんにする? お風呂にする? それともわたし?」


 愛乃がサファイアのような瞳をいたずらっぽく輝かせる。

 透はどきりとした。


 冗談で言っているとわかっていても、愛乃のような絶世の美少女に言われると、うろたえてしまう。


 透は頬が熱くなるのを感じながら、冷静になろうと努めた。


「ご飯は材料がないし、お風呂だって沸いていないよね?」


「そうだね。準備していないから……じゃあ、やっぱり『わたし』にする?」


「もし俺がそうするって言ったら、どうするの?」


 思わず、透はそう返してしまい、しまったと思う。


「えっと、それは……」


「ご、ごめん。困らせるつもりも、セクハラするつもりもなくて……」


「う、ううん。わたしが言い出したことだもの。それに……連城くんがしたいなら……『わたし』にしてもいいんだよ?」


 愛乃にそう言われて、透はますますうろたえてしまった。


 愛乃の華奢な体を、透は見つめて、そして色々と想像してしまう。


 これから、この金髪碧眼の可憐な少女と、一つ屋根の下で、二人きりで暮らすことになる。


 気をつけていないと、本当にどうにかなってしまいそうだ。

 透は首を横にぶんぶんと振り、「何もしないよ」と愛乃に言う。


 愛乃はちょっと残念そうに、透を見上げる。

 ともかく、話題を変えよう、と透は思った。


「えっと、とりあえず家の中を見て回ろうか。部屋とか荷物とか、どうするかを決めないといけないし」


「そ、そうだね」

 

 透と愛乃は自然と階段を登った。なんとなく二階から見ておこうと思ったのだ。

 二階の部屋を開けると、そこは寝室だった。


 真っ先に寝室を見ることになり、間が悪いと透は思う。

 これでは、まるで透が愛乃を連れ込んだみたいだ。「わたしにする?」発言の直後でもあり、気まずい。

 

 でも、愛乃はあまり気にした風もなく、部屋を見て、「おしゃれだね!」と喜んでいる。

 たしかに、上品な寝室だ。内装も家具も高級そうだった。


 ただし、問題が一つある。


「これって……ダブルベッド……」


 透はつぶやき、嫌な予感がした。

 もしかすると、この家には寝室が一つしかないのではないだろうか。慌てて透は二階と一階を確認したが予想通りだった。


 つまり、透と愛乃は、同じベッドに一緒に寝ることになる。


 透が寝室に戻ってくると、愛乃はベッドの上に腰掛けていた。


「連城くん……どうしたの?」


 愛乃が、首をかしげる。その仕草が可愛くて、透は思わず見とれた。制服のスカートの下から、ちらりと白くて細い脚が見えている。


 透が邪念を払い、事情を説明すると、愛乃は「あっ」とつぶやいた。。

 それから、愛乃は少し嬉しそうに、頬を緩める。


「婚約者だもの。一緒のベッドでも……当然だよね?」


「で、でも、そういうわけにはいかないような……」


「連城くんは、わたしと一緒に寝たくない?」


 愛乃は瞳を潤ませて、期待するように透を見上げた。

 その白い頬は真っ赤になっていた。





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