第3話 子供の考え

「だって、独り占め公園は大好きだもん」


車内でうれしそうに、小学校二年生の息子はそう言った。生まれてから年に何度かこの公園に連れてきているから、愛着がわくのかもしれない。公園と言っても、どちらかというと山奥のロッジがあるキャンプ場だから来ている人間が極端に少ない。サンコウチョウの時期には数人の野鳥愛好家が常にいるが、遊具など使おうはずもない。だからここに息子が来ると、滑り台も、ターザンロープも、横方向だけにすすむボルダリングも、自分の好きなだけ遊べる。「独り占め公園」とは息子ながらなかなかのネーミングだ。

春と冬が終わる頃、ここでゴミ拾いをすることが、私の、サンコウチョウ人としての最大の仕事だった。それほど山の奥にまでは入らないが、ロッジの管理人が見落とした小さなビニール片などを拾っていく。誤って幼鳥が口に入れないようにするためだ。


「あんまり、遠くに行かないでね、お母さん捜しにいけないわ」

「わかっているよ、お母さん、今日は見学してて、僕頑張るから」

「まあ、すごいわね、お兄ちゃん」

と妻は少し大きくなったお腹をシートベルトの隙間からさすった。


 公園に着くと、私たち夫婦は大きなため息をついた。それはキャンプ場の炊事場にゴミがたくさんあったからだ。また道の横には、炭の段ボールやら、アルミホイル、使い終わった炭は横の竹藪に捨てて、という具合だった。冬は開けていない、勝手に使ったのだ。

車でここまで来ているのだから、ゴミが持って帰れませんはあり得ない。すると息子はけろりとした顔で

「馬鹿だなあ、白カラス様が見ているのに。白カラス様の息子は数を記憶するのが得意だって言っていた。こんなことをした人間は、車のナンバーを覚えられる。そういう人が「お城に住む人」になるんでしょ? お父さん」


「ああ、そういうことだ」

羽の一部分が白い白ガラス、私たちの近くに住む、有名な鳥だ。そして

お城に住む人とは動物たちの召使いとなり、彼らの許可が無ければ、その場所から出ることも出来ない人間達のことだ。



 動物と話せるようになり、なぜこのような状態に至ったのかという最大の理由は、彼らは「強運と実力、そして種によっては美しさまで、兼ね備えた真の強者」であるということだった。

野生動物は宝くじに当たった者ではなく、実力でその金額を稼ぎ出すスポーツ選手のような存在であったのだ。

そして目的は子孫を残すという生態系のルールを遵守したものであった。

          

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