第4話 土の中
息子は私と手分けをして、広い園内を掃除し始めた。
妻は座ってひなたぼっこをのんびりと楽しみ、昼のお弁当を広げ始めた。すると、冬の間、一カ所だけ使える蛇口から、勢いよく水の音がする。
私も手を洗いに行き、息子がコロンとおいてあったタワシを使い、ゴシゴシと念入りに何かを洗っている。そして
「ああ、きれいになった!! これ本物かな!! 」
日にかざすと、キラリと光った。
「お父さん! お母さん! これ猫のネックレスでしょ!! きれいだね、宝石かなあ。土の中からちょっと見えたんだ。皮に名前が彫ってある。漢字の三と毛、もしかしたら」
それを聞いたとたん、妻は息子のところに行き、奪い去るようにそのネックレス、昔は首輪と言われていた物を手に取り、大き目の光る石ではなく、皮に刻印されている字を見つめ、そして、抱きしめた。
「三毛様! ああ! 三毛様!!! 」
その姿を見た息子が気が付かないはずはなかった。
「お母さん、三毛様の猫人だったの」
この国で最も有名な猫であり、あの第一猫に比すると言われる存在、
それが雄猫の三毛様だった。
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