第2話 原因と反乱



「私たちは話せるようになったのだから、こんなことを何故するのかわからない」


怒りを隠すように人間は動物たちに話しかけたが、冷静なのは動物たちの方だった。


「言葉が通じるのに人間同士戦争をしているのは君達の方だろう? まあ、このことが議題ではない事はわかっているから、論点を元に戻そう。

我々の生息域の完全なる確保を要求する。君達が「研究以外では決して入ってはならない、踏み入れるならば我々の許可がいる区域」をつくってもらおう。我々が君達の家に自由気ままに入ったりはしないだろう? それと全く同じだ。

そして愛玩動物と言われている犬、我々猫に対しては「世話をする人間達」を要求する。「捨てられた犬猫」のための建物をしっかりと建てて、そこで食事の用意、掃除が主な仕事だ。 


そして、他の動物に対しても同様、一般の世話係をつけてもらおう。


我々の中には元々「虫と会話できる」者がいて、彼らもこのことに賛成している。君達が虫たちの生活圏を犯すから、大集団となり作物を襲うのだ。触覚がふれあう程の密集地帯に追いやられるから、バッタの集団発生が起こることはすでに突き止めているだろう。

そう、我々は君達を「殲滅しよう」としているわけではない。共存こそがこれからの未来を開いていくことも知っている。いずれこの星も無くなってしまうのだから、君達人間はそのために本当の「ノアの箱舟」を作って貰わなければならない。だから生きてほしい、できるだけ健康に。

野生動物の生活圏を犯すから、妙な病気が出てくる、それもわかっているだろうから」


 簡単な言葉で、世界中に演説をした第一猫、彼を独裁者と呼ぶか、神に近い変革者と呼ぶか、


人間は後者を選んだ。




「我々は万物の霊長だ、何故他の生き物の下にならなければならないのか! 」


 人間として、そう言いたいのは誰の心にもあったので、この理念で設立された組織は、世界中で風船のように急に膨れ上がり、

そして、一瞬にして割れた、

尖った動物の爪で。


「君達こそ何をおもいあがっているのかな、我々は君達を殺そうとしているわけではない。なのに、君達の急進派は無力な子猫をどれだけ死に至らしめたのだ。今度こんなことを起こしたら、代表者の片眼だけでは済まされないぞ。考えてみたまえ、君達はたったの一種類だ、我々は何種いると思っているのかね。それでも我々を許さないというのならば、君達以外の全種を滅亡させれば良いだろう、出来ないことはなかろうから」

夜の町を、その組織の代表者が歩いていると、いきなりフクロウに襲われたのだ。このことにより、ほとんどの人間は恐怖し、彼らの、代弁者である第一猫の言葉に従順になった。

 そうなると彼らが言うように、妙な疫病や、蝗害も全く起きなくなり、また大きな敵が「彼ら」になったためなのか、人間同士の戦争も陰を潜めた。

時が経ち「この世界に生まれたヒトの子」は、すべてを素直に受け入れ、失明した代表者に対して、こう言うようになった。


「動物のことをわかっても、敬愛してもいないから、そんなことになるんだ」


新しい世代は、共存の道を素直に受け入れた。



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