作戦No.0037 出会い
「敵が来るまでまだ時間がある。私はやることがあるがお前たちは招集がかかるまで好きにしてるといい」
ストルがレクスとの謁見を終えて街に戻るとそう言い、レクスドームへ戻っていく。
なのでここで一旦みんな別れることになった。
「俺ぁ…寝るか…」
ガスポートは、軍の宿舎へと向かっていった。
イストリアとヒストリアはここに来る過程でいつの間にかいなくなっている。
「じゃあ、俺らも別れるか」
「だな」
残っていたクレルとラークも、それぞれ別の方角へと向かった。
当然のごとく、シェーロは、クレルについていく。
こうして、それぞれが街へと散っていった。
―――――――――――――――
さて、クレルに焦点を当てるのもそれはそれで面白そうだが、今回は少し趣向を凝らしてラークに付いていこう。
クレル達と別れたあと、ゆっくりと街を散策していた。
軍関係者の父を持つラークは、この街に住んでいるので、一瞬家に帰ろうかとも思ったが、任務中に帰るのは良くないと思い留まった。
それに何も事情を知らない一般人とは違って軍関係者である我が家は、この街が戦場になることを知っているはずなので、すでに避難している可能性が高く、家にいるかどうかも不明だ。
だから今、何もやることがないので無目的に歩くだけだ。
商店も普通に営業している。
街も活気付いている。
これから彼らがどうなるかは、分からない。
敵が攻めてくる。しかしラーク自身その敵というものを見ていないのだ。イマイチ実感が湧かない。
だが、敵が来るとしたらこの街が地獄のようなものになるかもしれない。
そんなことを考えて悶々としているラーク。
「嬢ちゃん、なんだこの銭は、ボロボロだし偽物じゃねえか!」
「あ!これ…間違えて持ってきちゃった…」
「何で間違えて…いや困ったなぁ」
そんな声が聞こえてきた。
別になんて事ないちょっとしたトラブル。
しかし人間というものは不思議なもので、こういう会話というのが妙に気になってしまう。
ちらりと、声のする方を見てみると…
店の入り口でラークと同い年か少し下くらいの少女が店の店主と向き合っていた。
どうやらこの2人が先ほどの会話をしていたのだろう。
と、何か気配を察知したのか、店主と話していた少女が突然こちらに視線を向けた。
当然、ラークとその少女は目が合い見つめ合うことになる。
「………」
「………」
しばらく続く沈黙、それはラークにとって無限にも思える瞬間だった。
端正な顔立ち、それに少し幼さを感じる容姿。
見つめ合えば見つめ合うほど、ラークの鼓動は早くなる。
それになぜかだんだんと彼女がこちらに近づいている気がする。
そして彼女はラークの手を取った。
え?
「彼が払ってくれるの!」
「お、兄ちゃんの彼女だったのか。可愛い子が一緒で羨ましいねぇ」
そのまま連れられ店に入り、そのまま支払いを済ませられる。
なぜか抵抗できない。
抵抗しようと彼女の方をみると…
「……」
なぜか自分から料金を払ってしまうのだ。なんというか、僕がいないと何もできないだろう?というような感覚に陥る。
「じゃあな、またこいよ」
ニッコリした店主に見送られ、2人手を繋いで店を出る。
そのまま仲良く?歩いていたが、ある程度来たところでようやくラークは名残惜しさを押しのけてその手を振り払い彼女の前に立つ。
「ちょっ、ちょっと待って!」
「あ!さっきはありがとうね!私はノイ!」
「あ…いや、俺は…」
「知ってる。ラーク…だよね?」
「え?」
もちろん、ラークはノイのことを知らない。初めて会うはずなのだが…
ノイはニッコリと笑っている。その笑顔に悪意など感じないが、しかし先程から怪しい言動が多い。
ラークを知っていて先程の状況で巻き込んできたのなら、なにか裏があって然るべきだろう。
「ほら、今日メインストリートでやってたじゃん。そこで知ったの」
確かにここに来るときに有名人みたいなことをしていたが………
「ええ…名前まで知られてるの…?」
そういうことであれば、ラークを狙って声をかけたのにも納得できる…ような気もする。
「ね!納得できた?」
「ま、まあ…」
「じゃあこのまま遊ぼう!」
またもやノイに手を引っ張られ、そのまま彼女に色々な場所へ連れられているうちにやがて夜になった。
―――――あとがき―――――
男女が出会うとき、物語は始まる……!
でわ!
カルクス 蒔絵蒔 @makiemaku
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