作戦No.0034 拷問

「まずは、どうしてここが分かったか聞こう」


薄暗い部屋で、5人の男女が体を縄で縛られ自由を奪われているリアンを取り囲んでいた。


そのうちの1人、20歳ぐらいと思われるリーダーのような青年が代表してリアンに対して話しかけている。


「……た…たまたま」


「はぁ…そんな嘘はすぐ分かる。この部屋に入った時は俺たちがいる前提の動きをしていた」


嘘は言っていない。

この男が言っていることはただの思い過ごしだ。しかし、彼らは銃などの武器を所持していて殺意のこもった視線をリアンに向けているために、いつ殺されてもおかしくない状況だ。下手なことは言えない。


「まずは名前を教えろ」


「………アンリ」


「アンリ…か」


彼らが何者か分からない以上は、偽名であるこちらの名前のほうがいいだろう。


聞かれてばかりでは不利なので、試しにリアン側から聞いてみることにした。


「あなた達は何者なの?」


「お前たちアディアの兵士共のだよ」


「そうだ、お前たちに街を奪われたんだ!」


リアンが本来いる場所である、ストルたち率いる部隊はオリコスという国に所属していて、アディアという国と戦争している。

現在のリアンはスパイとしてアディアの部隊に潜入している。


そして先程の話しぶりから、彼らはアディアと敵対しているようだ。そしてこの街は元々オリコスの住民が住んでいた。

更に、リアンがアディアに占領されてしまったこの街にわざわざ敵として潜入しているのかといえば、そんな街で救助を求めるものがいたからだ。



そこから導かれる答えは…


「あなた達ね。救助の信号を私達に送ったのは」


「なっ⁉」


ざわざわと、周囲がざわめく。

どうやら、当たっているようだ。


「私はリアン。あなた達の救出に来たの」


「なんだって⁉」


全員が驚いているようだ。少しだが警戒もゆるくなっている。

リアンを取り囲む5人は、リアンに聞かれないように少し離れたところで集まり、何やらヒソヒソと話をしている。


少し話し合っていると、段々声が大きくなり話し声が聞こえてくるようになった。


「罠だ!こんな都合のいいことがあるわけがない」


「だが、あの子が嘘をついているようには見えないよ」


「そこが怪しい。潜入して俺たちを助けに来る相手が、あんな素人みたいなわけが無いだろう」


「確かに、捕まえたときもあっさりだったし」


「でも、救難信号のことを話してたぞ」


「あれは敵にもバレているはずだ。だからこそをしているかもしれないというのだ!」


「そんなことしても奴らに利はない!だからこそ彼女は本物だと考えるべきだろう!」


「利ならある!情報を引き出すために潜入するんだ」


「私たちが役立つ情報なんて持ってるわけ無いじゃない!」


「ちょっと静かにしろ!」


リアンのことを尋問しているリーダーが話し合いを止めさせる。

そして他の4人に何かを言い聞かせ、渋々であるが皆を納得させていた。


そして1人でリアンの元へ向かってきた。


「まだ疑わしいことも多いが、とりあえず信じることにした。俺たちは、ここに取り残されて、奴らにバレないように静かに暮らしていたんだ。だが、ついこの間ものすごい大人数がこの街に入ってきてな。流石にこれ以上は見つかると思って救難信号を送ったんだ」


「………」


なるほど。事情はしっかり把握できた。これだけ聞けば十分だろう。とりあえず彼らを安心させることが先決だろいうとリアンは考えた。


「安心して、もう帰るための算段はついてるの」


「どんなだ?」


「簡単な話。2日後に迎えが来るの」


「…そりゃ、嬉しいね」


平静を装っているが、このリーダー、嬉しさが表情で見え隠れしている。


まあ、とはいえとりあえず、ドラードと連絡を取ろう。と思ったところで、リアンは体を縛られていることを思い出した。


「んっ…んっ…」


体をひねり、リアンを縛り付けている縄を振りほどこうとするが、びくともしない。


「…ほどいてくれない?」


リーダーに頼むと、彼は頷いて近づき、縄を解きにかかった……が、しばらく待っても縛り付ける感触がまるで変わらない。


「ん?ここがこうなって…は?どうなってんだこれ…おい!これ縛ったの誰だ?」


ぞろぞろと他の4人も近づいてほどく作業を手伝う。ああでもないこうでもないとリアンは仰向けにされたりうつ伏せにされたりごろんごろんと転がされる。

しかしそれでもほどける気配はない。いや、むしろきつくなっているような…


「…参ったな。だれか刃物持ってないか?」


「探してくる」


トタトタと1人がどこかへ行った。


「あ、これ使えるんじゃない?」


別の1人が立てかけてあったレクシブを手に取る。それはリアンが彼らに捕まる際に奪われたものだ。


「お、いいな。1回使ってみたかったんだよこれ。どれどれ…」


ガキッ


重い金属音がなり、レクシブは剣モードから銃モードに切り替わった。


「おっ!これどうやって戻すんだ…あれ動かねえ。あっ!!手を切っちまった…」


銃モードに変わっても切れない部分がなくなるわけじゃない。扱いを間違えば自分を切ってしまう。レクシブは、訓練をしないと危ないのだ。


リアンは慌てて、


「ああ!やめて!切らなくていいから!無線機でドラード呼んで!!」


「おい、誰か無線機彼女から奪ったやつどこやった?」


「知らね」


「ちょっ!何やってんの!私の無線機!ドラード!助けて〜!!!」





結局、リアンの無線機は見つからず、彼らが使っている無線機をドラードの周波数に合わせて助けを呼び、ドラードが来てからようやく、リアンは拘束から開放されたのであった。



―――――あとがき―――――



拷問されませんでしたね。残念!


この章終わりまで、あとちょっと!

戦闘がないまま終わります!


でわ!

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