作戦No.0035 作戦終了

回の任務である、救難信号を発信した者たちを発見することに成功した。


もう、残された任務は彼らを無事に連れて帰るのみ。

帰る算段はとっくについていて、レンホスとダリアが明日に迎えに来るのだ。

ならば、彼らが来るまで静かに潜んでいればあとは自然とコトが進む。

そう、ただ待つだけでいいのだ。


「分かったら大人しくしてるんだ」


何故かリアンを見てドラードはそう言う。

なぜ私が念押しされて言われているのかさっぱりわからない。


まったく…当てつけにも程があるというものだ。

そんなことをリアンは思っていたらどうやらそれが表情に出ていたようで、ドラードに白い目で見られた。


今は救難信号を送った者たちと一緒に1つの家の中で集まっている。さっきまでリアンが拘束されているのを全員でほどく作業をしていたところだ。

無駄に皆疲れていて一息ついている。


「まあいいか…とにかく、もう1度言うが、皆大人しくしているんだ。何もやることなんてないからな。仲間がここに着いたら連絡が来るから、それまで待つんだぞ」


じいいぃぃ……っと、リアンの目を見つめ、ドラードは言う。彼の目は必死だ。


そうまで念押しされてしまうと、何も言い返すことなどできるはずがなく、リアンは大きくうなずくことしかできなかった。



―――――――――――――――



ずっと待っているだけの彼らから場面は要塞基地にいるストルに切り替わる。


彼女は本部の人間と直通の連絡をしていた。


「どうした。わざわざ通話して来るとは珍しい」


『どうしても緊急で…な』


何やら深刻な雰囲気を醸し出している。

まさか…首都が敵に攻め落とされたか…?と悪い予想が頭をよぎる。


「何があった…?」


『…今代わる…』


「は?」


訳が分からないまましばらく待っていると、


『代わりました。聞こえていますか?』


「え?」


前触れもなく、突然若い女性の声が聞こえてきた。これはストルにとってイレギュラーなことだ。


『私はヴァイエ。レクスの横に2人いるうちの1人です。分かりますか?』


「も…もちろん」


レクスとは、オリコスの最高指導者。その隣にいる者といえば、常に彼の両隣にいるメイド2人だけである。ならばこの電話の主は、そのうちのどちらかなのだろう。


2人のメイドについては様々な噂がある。

レクスの愛人説や、その2人こそが実際の権力を握っている説などだ。


しかしこれは、何も知らない一般市民の間での噂だ。

軍上層部の中に広がっている噂は、最高指導者レクスと、そのメイド2人による3人体制によってこの国は統治されている、というものだ。

これはレクスに比較的近い地位にいる者たちの周辺で広まっている噂なだけあって、ほぼ事実と相違ないだろうというのがこの噂を知っているものの中での見解だ。



ともかく噂はどうであれ、そんな偉い人物がわざわざストルに直接連絡をしてきたのだ。

軍関係者であるストルは噂のことは知っているために当然のごとく緊張する。


『敵軍が進行しているという報告を聞きました。これはあなた達にとって一刻を争う事態です』


100万の敵兵士がこちらへ向かってきているのだ。しかも、ストルの現在いる要塞基地を経由して。


「ああ、そうだ」


『故に私から直接指示を出します。こちらに撤退しなさい。これからカルボに兵士を集めて迎撃体制を取るつもりです。100万ともなれば、敵の戦力のほとんどが割かれているはず。つまり、これを全力をもって迎撃することができれば形成は有利に代わります』


カルボは、オリコスの首都だ。ここに国のすべてがあるために陥落されれば、オリコスの敗北が決定する。


ストルはこの決定に、意義などあるはずがなく、


「わかった。すぐに向かおう」


『くれぐれも、無茶はしないように。………あ、それと』


「………?」


『この間の敵の部隊の撃破について、その時のあなた達のことをちょっと強めに宣伝しました。なので英雄にふさわしい態度をお願いします』


「………え…英雄?」


通話が切られる。

終始一方的に話されたが、最後に何か変なことを言われた気がする…


が、考えても仕方がないと割り切ることにして、ストルは早速やることがなくて暇している仲間たちを集めた。



―――――――――――――――



「本部からの連絡だ。これから来る敵に備えてカルボに戻ることになった。これから輸送車に乗って速やかに本部に向かう」


「ここはどうすんだぁ?」


ガスポートが不満げにそう言う。


「放棄するしかあるまい。首都が陥落するよりよっぽどいいだろう」


つまり、ここにいたことが全て無駄になるということだが、それも仕方がないと割り切る。


「リアンたちはどうするんだ?」


「これから無線でドラードに知らせよう。彼らには直接首都に向かってもらう。この要塞基地を経由しないルートを使えば、敵の部隊と会うことなく首都にたどり着けるだろう」


「燃料が足りないんじゃねえか?」


「いや、一応燃料はドラードに用意させている。もし足りなければ、来れるところまで来てもらって、カルボから迎えを送ればいいだろう」




といったところで、全員が納得した。

急いだほうがいいということで、皆出発の用意をし、ストルはその間にドラードへ連絡を送り、そして素早く、彼らは基地を出発する。







次の日になり、レンホスとダリアが輸送車に乗ってドラードたちを迎えに来た。

そして、遅れて彼らも首都カルボへと向かうのであった。




―――――あとがき―――――



2部が終了しました。

3部はストル、ガスポート、イストリア、ヒストリア、フィロス、ラーク、クレル、シェーロがカルボに着いたところで話が始まります。


ここから、話が大きく進む…予定なので、楽しみにしてほしいです。


それはそれとして、次回は1部、2部の総集編にします。

1話だけ読んで辞める人対策に、簡潔にまとめたものを作ろうかなと…

彼らには、3部が個人的に1番の山場なので、1部2部をすっ飛ばして読んでほしいというわけです。


ここまで読んでいただいた方、非常に感謝します。


でわ!

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