作戦No.0033 新拠点
ドラードとリアンはこの街で仮宿にしている家に燃料を置いたあと、2人で作戦を練ることにした。リアンはようやく休めると安堵する。
「あと2日で奴らを探さなきゃならん。1番やりやすい手は無線をオープンにして喋りかける方法だな」
奴らというのはドラードとリアンがわざわざこの街に潜入しているそもそもの理由である救難信号を発信した者たちのことだ。
2,3日後のレンホスとダリアが迎えに来る前に彼らを見つけなければならない。
それができなければリスクを犯してここに来た意味がなくなってしまう。
「でもそれをやると、敵にもバレる…」
敵はまだ何人か残っている。全員がいなくなったわけではない。それに出発したばかりの今そんなことをすれば、100万の敵兵士が戻ってくるかもしれない。
「ああ、そういうことだ。だからこれは本当に最終手段だな」
ドラードは地図を取り出し、机に広げた。
「前に…確か……そう、ここだ、この地区に行くぞ。ほら時間無いんだから早くしろ」
「ええっ!?」
全然話し合わないじゃん‼と突っ込みたいリアンだが、そんなことを言う間もなくドラードに急かされ結局ほぼ休むことができないまま目的地へと出発した。
―――――――――――――――
地図で印をつけた範囲の家を2手に分かれて、1件1件探し回る。
ガチャ
順番ずつ、家のドアを開け中に入る。
この街の住民が、急いで避難したお陰で鍵がされていない家が多い。
「あのー!どなたかいらっしゃいますか?」
しばらく待っても、その問いかけに返ってくるものはなかった。
どうやら居ないらしい。
だがもしかすると彼女の呼びかけに警戒して、潜んでいるかもしれない。だから軽く家の中を歩き回りながらもう1度だけ、
「私、あなた達を助けに来ました!」
………
やはり返事はない。
リアンはその家を出て、隣へと向かった。
ガチャ
「誰かいませんかー!」
………いない
次、
「誰かー!」
………
次
「助けに来ましたー!」
………
次
「おーい!」
………
……
…
結局、辺りが暗くなり始めた頃に全ての家を探しまわり、ドラードと合流した。
「見つからなかったな」
「うん…」
参った…とドラードは頭を掻く。
「仕方がない。お前は家に戻って隊長に連絡するんだ」
「分かった。ドラードは?」
「俺はもう少し探してみる」
ということで、リアンは家へと戻ろうと後ろへ振り返る。
そこで、
「おっと、そうだ」
ふと思い出したことができたようで、リアンもその声に反応してドラードの方を軽く見る。
「なに?」
「連絡する前に、拠点を別の家に変えておいてくれ、用心のためにな」
―――――――――――――――
拠点へと戻ったリアンは、地図を見ながら次の拠点をどこにするか考えていた。
「うーん…」
移動する際に考えるべきは主に2つ。
見つからないようにある程度離れること。また、目立たない立地であること。
そして、ストルたちのいる要塞基地へと連絡するのに必要となる、運ぶにはいささか重いこの中継機を移動させずに使えるほど近い距離であること。
軍用ということでそれなりの距離離れても通信は可能であるが、できる限り近いほうが安定する。
「5件くらい隣にすれば…いい…かな」
元々表通りから少し外れた位置に拠点がある。つまり、ただでさえ目立ちにくい立地なのだ。少々元の拠点と近い気もするが、彼女の案はかなり現実的といえる。
ということで、リアンは早速5件隣の家へ向かうことにした。
ちなみに燃料は、ドラードが帰ってきたときに運ぶ予定だ。
―――――――――――――――
ガチャ…
慎重に玄関を開ける。
もちろん、誰もいるはずがない。が他人の家に入るというのは少々緊張するのだ。
「おじゃましま~す…」
返事はない。
リアンは切り替えて、家の中を物色する。
1部屋1部屋見回り、奥の方へ進む。
「ええと、この部屋で最後かな…でもなんだろう…なんだか変な感じ…」
一番奥の部屋、何故か強くなる心臓をぎゅっと抑えながら足音を立てないように部屋の扉を開ける…
きいぃ……
部屋に入る…何も問題はない。
部屋を見回してみる…隅に潜む何者かと目があった。
「え…?」
「いまだ!!!」
身構える隙なく、急に体が浮く感覚に襲われた。突然のことに何が起きたのか思考が追いつかない。
だが…頭の片隅で思い起こされる。
この感覚は最近…そう、今朝敵の進軍の列に入っていたリアンをドラードが抜け出させてくれたときの感覚に似ている。
「なに…むぐっ…!!」
あのときの彼がやったことは、リアンが暴れないように体の動きを制限し、口を塞いだ。
つまり、
リアンは何者かに捕まった。
―――――あとがき―――――
次回はリアンが拷問されるかもしれません。
でわ!
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