作戦No.0029 燃料奪取

リアンとドラードは、なるべく誰にも目立たず見つからないように倉庫へと向かっていた。

素早く、潜み、ときには紛れ込む。その様子はさながら創作物の中のスパイに思える。


「用心しろよ。見つかるな、仮に見られても怪しまれるような動きをするな」


こくり、と辺りを見回し敵がいないことを確認しながらリアンはうなずく。


前に無線の増幅器を持ち込んだときとほぼ同じルートを辿っている。

少し道を逸れれば大きめの兵士が多く移動している通りに出てしまうので、兵士がその大通りを行進して大型の兵器を運ぶような地響きが鳴り響いていて気が引き締まる。


「こっちだ」


進んでいくうちに、やがて大通りを横切らなければならない状況が起こった。


「いいか、出撃が迫っている下っ端兵士の顔をするんだ」


「う…うん…うん?」


下っ端の兵士の顔というのが理解できない。

できないがドラードはこれ以上の説明をする気はなさそうだ。

とにかく目立たないようにしろということであろう。

そうリアンは思うことにした。


「行くぞ」


ドラードが一足先に通りへ出る。

それに合わせてリアンも離れまいとついていく。


彼が合図したタイミングは、ちょうど兵器や兵士の列が途切れたときであった。


怪しまれないように、走らず、しかし急ぎ足で、目線を目の前の細道へと真っ直ぐに進む。



あと少し、あと少し…



「………よし、突破したな」


「ふうふう……」


敵の視線を浴びる行為というのは緊張するものだ。

しかし、なんとかそれを切り抜けた。


「もう少しの道のりだ。行くぞ」


「うん」


―――――――――――――――


「ついた…が」


「うん…」


大きな倉庫が横並びに建てられている地帯。その一角を暗がりから見渡せる場所に見を潜ませているドラードとリアン。


目的地であるその倉庫街は、今まさに、多くの敵兵士たちによって物資の運搬作業がなされていた。


「まいったな…」


そこにさり気なく忍び込んで…というのはできない訳では無いが、リスクが高い。


「あ!見て」


リアンが指さした方向には、なんとヴィスがいた。運搬の作業を指示している。


「顔見知り…これは少し考えたほうが良さそうだ」


「うん…でもほら、あれ燃料じゃない?」


「あれか?……おいおい、だいぶすくねぇな」


ちょうどトラックに積み込まれている燃料は、倉庫に10個ほどを残し出発しようとしている。


「2,3個頂戴できればいいが…」


「あのトラックの方から奪うのはどう?」


ブロロ…

燃料を積んだトラックが出発した。その目的地を予測するために、ドラードは懐から地図を取り出す。


「街の正面入口、ここに行くはずだ。出撃前の待機場所だからな。俺たちが本来いるべき場所でもある。そうだな…出撃まではまだ余裕がある………。よし!じゃあ俺がトラックの方へ行こう。お前はここで待機、あの残ってる10個がすべて回収された場合は知らせてくれ、俺がうまいこと奪おう」


「分かった」


ドラードは言って早々に、音を立てないように慎重にその場から移動した。

リアンはそのまま、前方の様子を観察している。



それからかなりの時間が経過するとやがて、また新たなトラックが現れた。


「あ!」


なんとそのトラックは燃料の置かれている場所が見えない位置で停車してしまった。荷台に乗っていた兵士が3名ほど降りて、燃料の付近を漁って荷台に乗っけている。


「………」


体を右に左にしてトラックの隙間から様子を見ようとしているが、どうしても向こう側を見ることは叶わない。


焦るリアン。しかしここからではどうしようもない。

とにかく彼女は無線でドラードと連絡しようと思った。


「ドラード」


『………』


「ドラード!」


『………』


返事はない。なにせ彼は多くの敵が待機している場所にいるのだ。いくら呼びかけたところでこちらの声は聞こえていても彼の方から喋ることはできないだろう。


どうしよう、と焦るリアン。

とりあえず今の状況を報告しておくことにした。

そして、自分で判断するしかないと思った。


「ドラード、ちょうどトラックが燃料の場所を見えないようにして、状況が分からない。だから怪しまれないように侵入してみようと思うの」


辺りの様子を見回す。幸いなことにちょっと前にヴィスはどこかに行っている。今いる兵士の中に顔見知りはいない。怪しまれる可能性は低いだろう。


「見える位置に行って、すぐ戻ってくる」


リアンは立ち上がる。そして、運搬作業中の倉庫内へと向かっていった。



―――――あとがき―――――



なんか地味じゃね?

もっとかっこいいアクション書くつもりだったのにどうして……


ここまで読んでいただいた希少で貴重なあなたに特大の感謝を込めて。

でわ!

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