作戦No.0017 小さな任務
シェーロ、クレル、リアン、ラークの4人はのそのそと宿から出た。
「えーっと、こっち?」
せっかくなら、リアンとラークの任務を手伝おうということで、彼らは倉庫へと向かうことになった。
「これ?」
倉庫に入れば、目的の装備が真ん中に置いてあるので、すぐに分かった。シェーロがその装備に近づいていき、他の3人もその後ろを続く。
「どうかな、僕たちで運べば2往復ぐらいで済むと思うんだけど」
「いや、3往復ぐらい必要じゃない?」
「なら車両を取りに行ったほうがいいんじゃね?」
「私達、車の場所なんて分からないよ」
「それは、ドラードに聞けばいいんじゃない?…リアンがさ」
「え?私?」
「お、それがいい…な……」
目の前の山についてああだこうだと議論していたのだが、それは不意に止まった。
なぜならば、その山がふわふわと空中を浮いていたからだ。
「これで運べるね!」
シェーロが胸を張っている。どうやら、彼女が魔法の力でその装備品の数々を浮かせているようだ。
「おお、すげぇ…」
ラークが感動の声を漏らす。確かに、重力に縛られていないものというのは一種の芸術性も感じられる。
「3往復する必要がなくなったな」
「そうみたい」
ドラードに連絡する必要がなくなったリアンは満足げだ。
「じゃあ、行くか」
「うん!」
あっさりと解決し、4人は倉庫を出た。
そして、ふわふわと空中に装備品を浮かせたまま、彼らはストルのいる広場に向かった。
―――――――――――――――
「ほう…なるほど、すごいな」
クレルたちが広場に戻ると早々にストルはそういった。
シェーロはそれに構わず、広場の真ん中あたりに移動すると、魔法の効果を切ったのか、空中に浮かせていた装備品を全て地面に落とした。
それが以外にも勢いがよく、ぐわっしゃあああん!!!!!という非常に大きな音が響いた。
「あ、ごめん」
すかさずその周りに全員が集まる。
それぞれ嫌な予感をよぎらせながら、地面に散らばる装備品を手に取り調べてみると、
「…無事…か」
壊れてはいなかったようだ。ほっと胸をなでおろす。
「よし、よくやった。そしたら……そうだな……そうだ、これをあそこの無線装置にこれを差し込んで、フィロスに連絡してくれ。そうすれば後は彼女がやってくれるはずだ」
ストルは、リアンとラークに四角の小さい箱のようなものを渡す。USBみたいに、機械に差し込むことが出来る代物で、名前をナビィという。
「了解です」
ラークが受け取る。
その無線機が置かれている場所は既に知っている。
なのでこれ以上の問答は無しに、2人は目的地へと向かっていった。
「………で?」
「………」
「?」
リアンとラークが居なくなったということで、この場に残っているのは3人となった。
クレルはストルの視線から逃れるように、背を向けるが、そんな程度で逃げられるものではない。
「お前たちはどうしてここ……」「あ!シェーロ、そろそろ戻ろうか!!」
最後まで言わせる前に、何やら装備品をゴソゴソしていたシェーロの腕を引っ掴み、急ぎ足で逃げた。
「…ふむ……疲れは大したものではない…か……あれ程の戦果を上げておいて…?」
やけに早く逃げるクレルの、既に小さくなった背中を見つめながらストルは、感情を悟らせないような表情でそう呟いた。
―――――――――――――――
「ここだね」
広場から歩いて数分。この町の中で1位2位を争うほど立派な建物の前に来ていた。
おそらく、ここは本来、役所として機能していたと思われる。しかし今は働く人の気配はない。
そして、その建物の上の方をよく見てみると、1本の線がまっすぐ縦に伸びていた。
「アンテナがあるから確実かな」
お互いに目を合わせてうなずき、意見が合ったことを確かめ、正面にある両開きの扉を協力して開けた。
中は、広い空間に、待つための椅子が並べられ、奥の方に窓口がいくつか設置されている。よくある一般的な役場だ。
「どこかな?」
「あそこじゃない?さっきのアンテナの場所から考えると」
2人は窓口の裏側、職員以外立ち入り禁止の張り紙が貼られている場所へ入っていった。
そこから更にいくつか扉を抜けると、
「あった」
「結構大きいんだね」
部屋の真ん中に、かなり大きな装置が設置されている部屋にあたった。
辺りに家具の残骸のようなものが散乱している。おそらく、これを設置するときに邪魔になるものを壊したのだろう。
天井を見てみると、アンテナを通すための穴が開けられていて、小さい穴から空を見ることができる。
ラークは、ストルからもらったナビィをポケットから取り出し、装置に近づく。
ナビィを差し込む場所はすぐに分かったので、そこに差し込む。
「えっと…」
リアンは、装置を動かし基地にいるフィロスへ連絡をしようと試みる。
幸い、前にクレルが連絡をしたときのデータが残っていたので、操作に時間がかかることなく繋がった。
『はーい!』『なあに』
元気な声が響く。声が似ていて1人が喋ったようだが、実際は2人で今のセリフを言っている。察するに、どうやら繋がった相手はイストリアとヒストリアのようだ。
「あー、えっと、フィロスは?」
まさかこの2人が出るとは思わなかったリアンは戸惑い、ラークの方を見る。目が合った彼も、戸惑っている様子だ。
『ん―!』『いるよー』
「どこに?」
『えっとねー』『こ…』『ちょっと!勝手に出ないで…わあ!ちょっ、乗らないでぇ!!』
ガタガタガタッ…
どうなっているのかさっぱり読めないが、どうやらフィロスが双子に遊ばれているらしいということは理解できた。
「えっと、大丈夫?」
『『大丈夫!』』『じゃない!!!』
バタバタと暴れている?音が響き、リアンは話を進めていいのか迷ってしまう。
やがて…
『はあ……はあ…お、お待たせ。で、なに?』
「隊長に頼まれてこの町の無線機にナビィを挿したんだけど…」
『あ、分かった!あとは任せて』
カタカタとなにかを打ち込んでいる音が響く。そのまま待っていると、無線越しではなく、こちらの装置が勝手に稼働しだした。
『よし!これでこっちからそれを操作できるようになったよ!』
これにはリアンもラークも驚きだ。彼らもある程度装置の操作などは習っているが、こんな事はできない。小さくて、いっつも双子に遊ばれているあの子にこんな能力があったとは…
『……なんか見下された気がする』
「ギクッ」
『まあいいや、もう終わったからナビィ外して隊長に返してね!じゃあね!』
ブツッ
通話が切れると同時に、装置も音を止め静寂が訪れる。
「よし!じゃあ戻ろう」
ラークはナビィを取り外し、帰路につくのであった。
―――――あとがき―――――
はじめまして、皆さん、私はヴァイエ。
オリコス最高指導者であるレクスの隣にいる者よ。
作者いわく、私はクールキャラみたいね。
私がここに居すぎるとネタバレがたくさん出てきちゃうからもうそろそろ帰らないと。
今回も読んでくれてありがとう、私達について掘り下げるのは1章2部が終わって3部にいったときかしら。
じゃあ、もう行くわ。
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