作戦No.0015 装備探し
話はクレルたちが占領した町、ヤーレスに戻る。
クレルとシェーロが宿屋に休息を取りに行ったすぐ後のこと。
ストルからの指示により敵の物資を捜索しているリアンとラークは、お互いに微妙な距離を開けたまま町を歩いていた。
というのも、この2人はこれまでに話す機会が多くなかった。なので少し距離ができているのだ。
「敵の物資…やっぱ倉庫とかにあるのかな?」
「たぶん。でもどこに倉庫があるんだか…」
まあ、距離があるとは言っても、同じ境遇で、同い年の2人だ。別に話しづらい雰囲気も無いので会話は普通に起こる。
「うーん、やっぱ工場とか?」
リアンもラークも、ヤーレスの町には来たことがなかった。なのでこの町の知識が無いのである。
ならば、町の端から端まで歩き回るしか無い。とはいえ、ドラードと町の半分を捜索しているためその分少しだけ負担が軽いのでそこまでハードルは高くないだろう。
「工場なら、高い建物から見下ろせば見つけられそうだけど…」
軽く見回してみても、この町は1番高くても2階建ての家しかなく、どうやらラークの考えは実行不可能の様子。
「あ、高い建物っていったら、あれ知ってる?世界一高い塔」
歩いて探すだけなので、自然と雑談が発生する。
「お、知ってる。確かこの町から近かったような」
その町は距離こそそれなりにあるものの、ヤーレスの隣町なのだ。
位置的には西北西の方向にあり、ストルの隊が次に攻めることになる場所でもある。
「一回は登ってみたいな。エレベーターとかいう登る箱?みたいなのがあるらしいんだよね」
「あー、レクスドームにあるってやつか。気づいたら上にいる魔法みたいな…」
首都カルボにある、最高行政機関レクスドーム。実はオリコスで最大の建物ともっぱら評判なのだ。
そして、そのレクスドームには、一般には普及していないような技術が多く組み込まれている…と言われている。
そこに夢を持つ者が少なからず現れるため、憧れの職業のトップには必ずレクスドームに入れる、行政関係がランクインするのだ。
「聞いた話によるとカラクリでできていて、電気で動くらしい」
「すごいね、私にはよく分からないよ」
「僕だって分からない。…噂によると、あのおとぎ話の時代に作られたとか」
「あ、知ってる!あと、この国を作った初代の指導者がまだ生きてるっていう話もあるよね!」
何話か前に話したおとぎ話、これはオリコスの国民に深く根付いていて、そこから派生する話や噂も多く存在する。しかしそのどれもが、真か否か全く分からないような話ばかり。だが完全に嘘とは言い切れない辺りに皆、夢を持つのだ。
「僕も聞いたことあるな、それ。でももう何年?1000年ぐらい?昔の話だろう。人間が10回は干からびるほどの年月だぞ」
「あはは!確かに…」
リアンは笑う。だが、すぐにその笑いから変わって、誰も知らない秘密を、こっそり教えようというような表情に変わる。
「でもね、その噂には更に続きがあるの…」
ラークは続きなど知らなかった。なので興味深そうにリアンに体を近づける。
「なに?」
「この世界のどこかに、不思議な力を使う人間が住む島があるって言うのは聞いたことある?」
ラークは知っていたようで、うん、と首肯する。
「その人たちはね、その不思議な力のおかげで、私達の何10倍もの年月を生きるらしいの」
ここまで言われれば、ラークも意図が読める。
つまり彼女が言いたいのは、
「その島の住人が、初代のオリコス指導者ってこと?」
「そう!!」
かなり興奮しているリアンに対し、ラークは至って冷静、むしろ低いほどであった。
「それはなんか…出来すぎじゃない?」
「なんで⁉筋が通ってんじゃん!」
ラークはこの噂話をお気に召さなかったようだ。そもそもあまり知られていない噂話。信憑性はかなり低いのだろう。
「筋…通ってるかなぁ。その『不思議な力』っていうのが怪しい。だいたいそんな島、誰も見たことないわけだし。島に関しての噂は信じない人がほとんどじゃないか。なんで島が見つからないか説明できる?」
「そ……そこは、ほら、不思議な力で……」
「結局不思議な力に頼るわけでしょ?僕は嘘だと思うな」
「えっと…」
説得したいが、効果的な言葉がまるで浮かばなくなってしまったリアンは少しだけ悩んだ後、
「分かった!もっと調べとく!」
「ああ…そう」
それきり、噂話に関することに触れることなく他愛もない雑談を交わしながら街中を探索していると、見事に倉庫らしき建物を発見することに成功した。
町に人がいるはず無いので、無遠慮にバーンと扉を開け中に入る。
中は予想通り、だだっ広い倉庫でそこには乱雑に武器や無線など軍の装備が積まれていた。
「そんなに量はないね」
リアンの言う通りそこあったものは、せいぜい10人分の装備があるのみで、実に寂しいものだった。
「とりあえず報告しておこうか」
うん、と頷きリアンは無線機をドラードに接続する。
『随分遅かったな、見つけたか?』
「うん。倉庫に、装備を発見したんだけど…10人分くらいしかなかったの」
『10人分か…まあまあだな。こっちは弾薬をたんまり手に入れたぞ。俺は輸送車に積んでいくつもりだが、お前たちはなにか考えてるか?』
「え…いや」
『そうか、俺が寄って手伝ってやりたいところだが…今どこにいる』
「えっと、東の町の端っこ辺りです」
『やっぱり正反対か…仕方がない、俺がそっちに行くには時間がかかる、だからお前たちでなんとか運んでみろ』
ガッシャーーーン!…カランカラン
無線越しに、そんな音が鳴り響き、ドラードがチッと舌打ちをする。
『すまんな、こっちも忙しくてな。もし八方塞がりになったらまた連絡してくれ。じゃあな』
プツン
無線が切れる。
「どうだった?」
「うーん、なんか忙しそう…私達で運ぶ方法を探そ」
「分かった。となると台車かなんかを探さないと…」
倉庫内を見回したところで、そういったものは見当たらない。仕方がないので、2人は倉庫から出ることにした。
「んー、見渡す限りはなさそうだね」
倉庫から出て再度周囲を見回したが、やっぱりものを運べるようなものは見つからない。
そんな都合よく行くわけがないと分かっていた2人は、すぐに次の策を考える。
「この建物って、宿屋?」
リアンが指差したのは、倉庫の右隣、周りの建物より一回りほど大きいそれは、確かに宿屋の雰囲気をまとっている。
「だね」
「宿屋ならなんかあるかな?」
「さあ、どうだろう。お客さん向けに荷台を貸すサービスがあったりすればもしかすると…」
2人で顔を見合わせる。彼らにとってはこれが初任務で、朝から緊張しっぱなしであった。更に、基地からヤーレスまでノンストップで歩いている。
つまり、かなり疲れていた。
そんな中で目に入る宿屋。休むつもりは無いが、なんというか、本能的なものが彼らに入れとそそのかす。
「見てみよう」
「そうしよう」
少し、ほんの少しだけ、休もう…
そんな考えが見え見えな表情を浮かべつつ、2人は宿屋の扉を開き中に入った。
―――――あとがき―――――
僕の出番だ!
こんにちは、ラークです。
悲しいことに、作者が僕の性格を忘れたみたい…
ほんとに悲しい…作者が僕になんて言ったか分かる⁉「お前、キャラ、薄い」だって!ひどいよね。そもそもキャラを作ったのはあいつのくせに。
おっと、ぐちはこれくらいにして、もうお別れにしようか
じゃあね。
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