作戦No.0011 到着!

「報告!敵兵士2名確認!撃破ができず失敗!」


む?

書類整理を終えたヴィスは、ゆったりと椅子に座り窓から外の景色を見ながらコーヒーを飲んでいたが、想像と違うことを言われたため、報告をした男の方へ意識を向けた。


「失敗した?」


「ええ…」


「なぜだ」


そう言うと男は、持っていた書類の中身を手早く確認した。


「ええと…報告によると、弾が当たらない…と」


「当たらないだと?わからんな。どういうことだ。銃のメンテナンス不足か?」


「いえ、どうやら、何かしらのジャミングで弾をそらされた…と」


なんだと⁉

ヴィスは驚きから気持ちが高ぶりつい立ち上がってしまった。

そのまましばらく立っていたが、落ち着きを取り戻し座り、一旦コーヒーを机に置く。


「ううむ…それが本当であれば早急に対応しなければならんぞ」


またヴィスは窓から外の景色を見る。さっきのゆったりした気分はどこに行ったのかというほどに、今は焦っている。

男も、気を使い喋るのを中断しヴィスの動きを観察している。


「で、そんな奴らがせめて来て、今はどうなってんだ」


「それが…」


「なんだ?」


「逃げられた…と」


また、報告している男へと、ヴィスは勢いよく振り返る。


「逃げたぁ⁉」


「ええ」


ヴィスは、右へ左へゆっくりと、落ち着きなく部屋を動き回る。


「なぜだ?」


とヴィスが聞くと男は、フッフッフ、と不敵な笑みを浮かべた。


「それは、おれ…私の案で180ミリ高射砲でドン!と」


180ミリ高射砲というのは、広場の真ん中に置かれている、クレルが一生懸命探していたもので、山なりに大砲を打ち上げて目標に命中させる。威力は折り紙付きだ。


「でもやれなかったのか」


「ええ、でも敵はそれを期に撤退していきました」


ヴィスは考察する。

おそらく、何かしらのシールドを張ることで、銃弾を避け、爆弾を防いだのであろう。しかし、それには限界があり、巨大な大爆発を与えることで敵のシールドは限界に達する。


「まだ試験段階ということかもしれないな。付け焼き刃ってことだ」


「なるほど」


とりあえず、心配する必要は無いと判断し、安心したヴィスは大きくため息をつきながら椅子に座り、机に置いておいたコーヒーを手にとった。


「あ、それと」


「何だ?」


もう落ち着きを取り戻し、これ以上驚くことは無いだろうとヴィスはコーヒーを口に含みながら男に意識を傾ける。


「その例の2人なんですが、またこちらへ接近しております」


ぶううううううう!!


ヴィスはコーヒーを吹き出した。


―――――――――――――――


クレルとシェーロは、再度、町へと接近を試みていた。

今度は、攻撃を受けた際の対策を考えてきているのでクレルの心に余裕がある。

ただ、


「なあ、シェーロ、本当に魔法なんてあるのか?」


やはり、その対策をクレルは信頼しきれていない。


「大丈夫だよ!私から言わせればこんな銃よりも安心できるよ!」


なんだろう、そこまで言われてしまうと、クレルも楽観してしまう。


「そっか!魔法ってすげーな」


「でしょ!」


「おお!」


2人がなぜこんなにも余裕でいられるのか、それは敵から攻撃を受けていないからである。

先程ここに来たときは、まるで集中豪雨のように撃ち込まれていたのだが、今ではまるで撃たれない。


「うーん、やっぱ見えないよなぁ…」


最初に町を観察したところよりもかなり近くなったこの場所なら、例の大爆発の元が見えるかもしれないと思い歩きながら双眼鏡越しに観察しているが、やはり見つけることは出来なかった。


「気にしないでいいんじゃない?だってあの時も全然効かなかったよ」


「そうだっけか、確か熱かったような……」


そう自分で言いながら、あの時のことを思い返す…


「………」


思い返せば、全く熱くなかった。そして、あのときの醜態を思い出してしまったので、すぐに関係ないことへと意識を切り替えた。


「そ、そういえば、盾みたいな魔法が使えるなら、なんであのときわざわざ手で叩き落としてたの?」


「え、っとね、なんとなく?」


なんとなくって…

そう思ったが、これ以上の会話は無かった。

なぜならば、とうとう町の正門に着きそうというところで、彼らは気づいたのだ。


道がまっすぐ続く先にある広場に、巨大な筒状の大砲が見事にこちらを向いていることに。




「放て!!!」



ドン!!!!!!!!!!



まっすぐ、大砲から発せられた飛翔体はクレルとシェーロの元へ飛んでいく。

そのあまりの速さに、クレルは一切反応できずにまっすぐ命中した。



どおおおおおおお!!!!


また、クレルたちの周りに大きな炎が上がる

が、


「おお、すげえ!」


「でしょ!!言ったでしょ!!」


何故かシェーロが興奮している。周りが恐ろしく真っ赤に燃え上がっているが、クレルとシェーロは一切その影響を受けていない。



ちょっと時間が経つとすぐに炎は収まった。


「案外大したことないんだな」


クレルとシェーロでお互いに目でコンタクトを取り、そして町の中に侵入しようと止めていた足を前に進めようと……

したところで、


ドン!!!


ヒュッ!!



ドオオオオオ!!!!



「うわ、もう次が来た!」


「でもそんな気にしないでも大丈夫だよ!行こ」


炎など無いかのようにどんどんと歩いていくシェーロ。

クレルも隣をついて歩く。炎は魔法の効果でクレルたちをさけていく。





何度か攻撃があったが、それも今となっては止んでしまった。


やがてクレルたちは、とうとう町についた。


そこで待っていたのは、あらゆる方向からの敵の視線であった。

後ろを振り返ると、いつの間にか回り込んでいた敵がいる。


全員銃を構えて、こちらを警戒している。





「なあ、シェーロ」


「なに?」


こんな状況になって初めて、クレルの中に1つの疑問が浮かんだ。





「俺らって、何をするためにこんなとこに来たんだっけ?」


「……さあ?」


とりあえず、殲滅したほうがいいんじゃない?


そう言いたげな様子のシェーロは、いつの間にか手に真っ白な剣を持ってクレルの方を見つめ微笑んでいた。


それは、まるで1つの絵のような光景だった。



―――――あとがき―――――


やあ、レンホスだ。

クレルくんとシェーロちゃんが一生懸命戦ってるから、僕たちは出番がないね…


まあとにかく、ここで僕が言えることは1つかな。

この話に出てきた「ヴィス」っていう敵、これは覚えておくことをおすすめするよ。

じゃあ、またね。

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