作戦No.0009 集中砲火
さて、現在ここは要塞から少し離れた草原地帯。
そこには、クレルとシェーロの2人が、てくてくと歩いていた。
「風が気持ちいいねー」
「………」
「あれ?クレル、どうしたの?」
横からシェーロはクレルの顔を覗き込む。ものすごくいやーな顔をしている。
「なんでそんな脳天気なんだよ」
「んー?そうかな。普通だけど」
「そういう意味じゃなくてよ」
いつ、どこから敵に撃たれるかわからないような状況の中、ピクニック気分で自然を感受しているシェーロに呆れた。
「今も敵に見られてるかもしれないんだぜ。シェーロは呑気だなぁ」
「そうかな。よくわからないな〜。あれくらいチョイっと捕っちゃえばいいのに…」
「出来るか!!」
クレルは激昂するものの、シェーロには届かずキョトンとされた。
「クレルなら出来るよ?」
何を……
そう言い返そうとしたクレルは、その寸前で言い淀む。シェーロがあまりにも当然という表情をしていたからだ。それがあまりにも、クレルに違和感として突き刺さる。まるで、別の誰かを見ているような……
「………今はそれどころでもないか…」
シェーロの謎は多いけれど、それを知るのは今である必要はない。
「あ!ここじゃない?」
クレルはポケットから地図を取り出す。その地図にはストルによって印がつけられていて、先程からずっとその印に従ってクレルとシェーロは進んでいる。そして、今立ち止まったこの場所は、地図で見ると大きな丸が書かれている場所である。
「うーん、ここに敵の基地があるらしい…けど……移動されたか」
「逃げちゃった?」
単純に考えるのであればシェーロの言う通り逃げたのかもしれない。しかし、そうでない可能性も否定できないのが難点だ。
「どうかな。そもそも、大人数のキャンプ地なんてそう簡単に移動できるもんなのか」
「んー?」
ここは見晴らしのいい平地。まさかここに来るまでに見落としていたとは考えにくいし、周りを見回したところで敵の基地らしきものはない。
そんな中から有り得そうな場所を挙げるとするならば…
「あの町か?」
ここから数キロ先に、それなりに発展した町が広がっている。逆に言うと、それ以外には地平線とクレルたちがいた基地しかない。
「なあシェーロ」
「なあに?」
クレルは数キロ先のその町を指差す。
「あそこに誰かいない?街の様子とか分かれば嬉しいんだけど」
そう言われてシェーロもその町の方を向いた。なかなか距離があるので、町の中の様子を見ることはクレルにとって不可能であるが、もしかしたらシェーロは可能かもしれない。
「んー。人?町の周りに何人か立ってる」
「お、武器とか持ってないか?」
「んー?えっとねぇ…あ!これ持ってる」
シェーロは自身の腰に下げている武器、レクシブを示しながらそう言った。
「でも色が違う…」
それを聞いて、クレルは確信した。やはりあの町に敵がいるようだ。
「あー、それは敵で間違いないな」
「そうなの?おんなじ武器だけど」
「このレクシブ作ってるところはな、4つの大陸の南、ゼクスティオにあってな」
「うんうん」
「あそこは絶対中立を保ってるから、こっちにもあっちにも武器を売るんだ。金儲け主義の代表みたいな奴らだよ、本当に」
レクシブを作っているその会社は、大抵の人に戦争を助長していると言われ嫌われている。しかし、その武器が生命線であることも事実だ。言わばその会社がこの戦争の勝敗を握っているのだ。
「そうなんだ。じゃあ敵もおんなじ武器持ってるってことだね」
「ああ…そういうことだ」
「なら、同じ武器使って負けてるってこと?」
「お、おお…まあ…」
そうはっきりと言われてしまうと、クレルは少し言い淀んでしまう。
自分の国の能力不足を指摘されているみたいで…
「と…とにかく、もう少し近づきたいな」
クレルの目的は偵察だ。敵を殲滅することは目的ではない。しかし、この位置では敵の戦力がわからないため、偵察という目的を達せていない。
「あそこに行かないの?」
「行きたいんだけどな…うーん」
こういうことはストルに報告して相談するのが最適解なのだろうが、あいにく無線が届く範囲の外にいる。
一旦戻るのは有りだが、それをしてしまうと当然時間がかかるし手間もかかる。
ならば…
「行ってみよ!」
「…そうするか」
グダグダ考えても仕方がないと思い、考えがろくにまとまらないまま、シェーロに言われるがまま進むことにした。
―――――――――――――――
さて、深く考えないままクレルとシェーロは敵の陣地に近づいて行ったわけだが、そもそも今いるこの場所は遮蔽物もろくに無い見晴らしの最高な草原地帯なのだ。視力のいい人(シェーロ)がその場で町の様子を見ることが出来るくらいには。
つまりどういうことか、
「ほっ!ほっ!」
ぺしぺしと、シェーロがあっちこっち移動しながら、まるで飛んでいる羽虫をはたき落とすかのような動きをしながら舞っていた。
「うわあわああおお!!」
クレルも同様に舞っているが、こちらの場合は右へ左へ逃げ回って、否、逃げ舞っていた。
クレルたちが敵のいるであろう町へとあるき始めてから早数分。
遮蔽もなにもない、まっすぐ堂々と歩いてくる彼らは、敵にとって思いっきり的となりえた。
というわけでクレルたちは、敵から激しい攻撃を受けて足止めされていた。
数分に渡って銃弾を食らっても死なないクレルたちに敵は一体どういう感情を抱いたのか不明だが、攻撃を受け続ければ受け続けるほどに攻撃が激しくなっていってる気がする。
「やばいって!」
「ほっ!ほっ!ほっ!なんかどんどん多くなってない?」
そういうシェーロは比較的余裕な印象を受ける。
何分もシェーロは敵の攻撃を弾いているのに、疲れている様子は全くない。
「すごいなシェーロ!」
「エヘヘ…」
チュン!
クレルの左頬を銃弾がかすめた。クレルの言葉にシェーロが照れて集中を欠いたためだ。
「うおっっっぶねえ!!」
「あ、ごめん!」
「ごめんつったって!あと少し弾がこっちいってたら…」
背中にゾワゾワという嫌なものを感じつつ、かすめた左頬を確かめるようにさすっていると、
チュン!
今度はその頬をさすっていた左手を銃弾がかすめた。
「っっっっ!!!」
声にならない叫びを上げて、バクバクと高鳴る心臓を抑える。
「おっとっと、また見逃しちゃった。はあ…なんだか疲れてきちゃった」
まずいまずい、ようやくそう思ったクレルはこの状況を脱する方法を模索し始める。
だが、
「どうしよ!」
「え?なに?」
どうにかする
と、
突如敵の射撃がやんだ。
「お?」
まだまだ町からは距離があるため、クレルには向こうの様子を視認することは難しい。
「シェーロ、向こうは何してる?」
「うーんと、あれは…」
シェーロには街の様子が見えているみたいだが…どうにも言葉に詰まっていて歯切れが悪い。
見えているものを言葉に変換することが出来ないようだ。
「え、なに」
「うーん…」
ドン!!
重い音が鳴り響く。まるで何かが発射されたような音。
ひゅうううううぅぅぅぅぅぅ………
「あれ?なんか聞こえ……」
どおおおおおおおん!!!!
クレルが辺りに突如鳴り響いた音を指摘するのも束の間、クレルたちの周囲が大爆発して、灼熱に包まれてしまった。
―――――あとがき―――――
んぁ?
ああ…あとがきか………チッ、めんどくせぇ。
俺ぁ別にここで話すこたぁねえんだがな、あ?…ああ…そうだった、まあ、次も見てくれ、そしたらあいつが喜ぶからな。
じゃあな
あぁ、俺ぁガスポートだ。言うの忘れてたわ
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