第99話 勝負の行方

『酒呑み勝負は、身分の如何に関わらず、平等に対戦する事が出来る!勝者は全てを得る!ドワーフの神聖な勝負で有る!』


「サイが国王に挑戦、酒呑み勝負、始め!」

 最初に挑戦者が、酒を飲み干す、見届けた受け手が酒を飲み干す。

 これを、延々と繰り返します。


「確かに強いお酒!でもウォッカやテキーラに比べるとまだまだね!」

「一杯は誰でも呑めるわい!余裕コイてると、ゲロまみれの醜態さらして笑い者の道化で終るぞ!次を呑め!!」


 勝負の見届け、群衆にも安酒が振る舞われます。

 酒好きのドワーフ達、これを目当てに、勝負見届けに集まってるのです。

 見守る、豪と進にも当然振る舞われます。


「初体験!飲むぞ」

 酒初体験の二人は、恐る恐る口を付けました。

「あれ?不味い水?」

「味は兎も角、水みたいだね?」

「おう!兄ちゃん達、良い呑みっぷりだねぇ!挑戦者の関係者?」

「あぁ、サイちゃんの仲間だ」

「だろうと思った、干し肉食いな!痩せ細って!」

 太目のおばちゃんが、哀れんで二人に干し肉を差し出します。

「ありがとう」

 かじってみると、凄く旨い。

「旨い!」

「そうだろ!塩抜きした干し肉だよ」

「兄ちゃん達、ソーセージ食え」

 後ろのおっちゃんが、普通の倍位デカイ、ソーセージをくれた。

「ありがとう!」

「わっ!すげぇ!旨い!」


 痩せ細って、可哀想に思われたのか、気の良いおっちゃんおばちゃん達が、競う様に食べ物をくれます。



 サイとドゴスは、余裕でジョッキを空けて行き、大樽一つを空に二つ目に入ります。

「小娘!待ってろ小便だ!」

 鑑定で、見抜いたサイは

「審判!ドゴスは、指突っ込んで、酒をモドす気だよ!同行して見届けて!」


「ば、バカな事をホザくな!」

「挑戦者の要望です!同行します」

「貴様!国王の小用を覗く気か!」

 審判3人の内、2人がドゴスに着いて行きました。


「挑戦者殿!指摘に感謝する!国王には疑惑を持って居ましたが、要請が無いと審判は勝手には動けないもので」


 以前の呑み勝負、不自然な5回のトイレ通いが有ったそうです。


 散々呑んで、動いたもので、酔いが回ったのか、ドゴスは少しフラついています。

「小娘!余興だ、運動するぞ!」

 敗けそうになると、殴り合いに誘う!バッフさんが言ってた通りに成って行きます。


「審判さん、ドゴスを殴り飛ばしても、反則には成りませんか?」

「殴り合いに挑戦者が、応じた時点で力比べに変ります、相手を気絶させれば、勝者に成ります」


「応じるけど、もっとお酒呑みたいよ!」

「その通りだと思います、純粋に呑み比べがドワーフらしい勝負だと、常々思って居りました」


 審判と話して居ると、ドゴスが殴り掛かって来ました。

 サイは、絶妙のタイミングで、ドゴスの腕を引き落とし、股間の辺りを蹴り上げました。


 地面にゴツンと頭を打ち、一瞬逆立ちしたドゴスは、地響き立てて転がります。

 意識が無くなり、抑えの利かなくなったドゴスは、クジラの潮吹きの様に呑んだ酒を噴水しています。


「勝者サイ!!新国王に就任!!」

 審判が、高らかに宣言しました。

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