第81話 孤独な旅【2】

 日が暮れそうです。

「夜歩くのは危険、木の上なら安全に朝を迎えられる」

 登れそうな木を探します。

 飛び上がれば、届きそうな枝の生えた木を発見、都合良く枝は交互に生え、順に登ればかなり上まで行けそうです。

「あの太さの枝では、懸垂、逆上がりも無理」

 登り方をシュミレーション、何度か木を観察しながら、考えます。

 走って、あの瘤を蹴って飛び上がり···「うん!行ける!」


 身軽に成るため、背中に背負ったこん棒は、幹に立て掛けました。


 木の幹にある瘤を足掛かり、太い枝に抱き付き、瘤を蹴って枝の上に登りました。

 日頃身体の鍛練を怠らず、鍛えていたのが幸いでした、普通の女子に出来るはずの無い、難易度の高い木登りです。


 安心すると、空腹と喉の乾きに襲われます。

 袈裟懸けに背負った、ショルダーバッグ、中には600ccほうじ茶のペットボトル2本、コンビニ握り2個が入って居たのはラッキーです、後は常食のカロリーメイト3箱。

「頑張って食い繋いで1週間か?飲み水を探す必要が有るな」

 腐ったら大変と、コンビニ握り1個を大切にしつこい位噛み締め、10分も掛けて、食べます。

 取り除いた、パッケージに付いた海苔の欠片も、取り出してたべました。

 包装パッケージ、捨て掛けてバッグに仕舞います。

「何かに使えるかも、非常事態だよ!何でも持って置く方が良さそう」


 ペットボトルのお茶を、一口飲んで我慢します。

 飲み水が有るか分からないもんね。


 安全と思われる木の上、落ち着くと今の異常な状況を考えてしまいます。


 ラノベ知識の全く無い彼女に、いくら考えても解答は得られません。

「ここはおそらく、日本では無い、では何故私がここに居る?

 あんな化け物、世界中何処にも居ないはず、もしかして、某国の開発生物兵器?世界中が迷惑してる、ウイルス開発した位だよ、あり得るかも?でもそれでは、何故私がここに居る?」


 結局何故ここに居る、と言う疑問に戻ってしまう。


「考えてもしょうが無い!危険な異常事態、食糧の有る内に民家を見つけないと!」


 微睡む程度の睡眠、身体を休めた事で疲労は感じない、若さの賜物木から飛び降り、こん棒を背負って、北を目指します。



 魔物から隠れ遣り過ごし、10日歩き続けました。

 川も湧き水も見付けられないまま歩き続け、大切に一口で我慢した、お茶も最後の一口を残すのみ。

 カロリーメイトも、最後の一本を食べるか迷って、非常な我慢で残したもの。


「草の汁か木の樹液、試して見るか?」

 偶然目の前の木が、楓だったのが幸い、手錠で引っ掻いた木肌から滲み出る樹液をむさぼる華子でした。

「甘い!!樹液って、こんなに美味しい物だったとは!」

 充分飲んで、尚も滲み出る樹液を、お握りパッケージで受け止め、ペットボトルに移し、何時間繰り返したか、ペットボトル2本が樹液で一杯になって居ました。

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