華子、サイと出会うまで
第80話 孤独な旅【1】
ここから、もう一人の、本当のとばっちり召喚され、訳が分からないまま、逞しく生き抜いた、もう一人のヒロインの話が数話続きます。
私は刑事科勤務、事務員じゃ無くバリバリの現場刑事だよ。
事件現場に向かう途中、上着の下にはショルダーにS&W回転式リボルバー、銃身の短い拳銃を偲ばせて居ます。
「お婆さん重そう!持ってあげる」
(高校生かな?)
珍しい善行を見て、ささくれだった気持ちが和らぎ、自然に笑顔になって居ました。
瞬間光に包まれて、辺りが霞み高校生2人と、お婆さんが遠退いて消えて行きます。
「あれ?お婆さんじゃ無い?あの人TVで見た事······」
女刑事として、肩肘張って健気に生きて来た山田華子は、この後過酷な運命が待って居るとも知らず意識を手放すのでした。
都会生まれの都会育ち、山田華子の孤独なサバイバル生活の始まりです。
「ここは···どこ?」
意識を取り戻した華子は、辺りを見回しました。
「私は、何で森の中に居るの?」
グゥウォ!ガッグゥ!
近くで唸り声がします。
咄嗟に巨木の後ろに身を隠す、と同時に見た事の無い化け物が2体現れ、2体は争っているようです。
無意識に銃を取り出し、撃鉄を引きます。
⦅何よあれ?二足歩行の豚?⦆
ラノベを一度でも読む機会があれば、オークと分かるのですが、生憎読書の習慣の無い華子には、知りようが有りません。
一頭が逃げるのを、もう一頭が追い掛け、消えて行くのを安堵で見送る華子でした。
根こそぎ折れた木の根っこ、膨らんでいて原始人が持ってたこん棒みたい、何も得物が無い「拳骨よりは威力有るでしょ」拾ったこん棒が、ずっと華子の武器になります。
「あんなのが居るって、うかうか探索も出来ないよ」
「太陽は?」
頭上を見上げ、木洩れ日を見詰め
「真上より、西に傾いてる、こっちが東、南北はこっちとあっち。さて、何処に向かうか···ここは暑い!北に向かう」
どちらに向かっても、苦難の旅ですが、もう少し南に行けばトワイライト王国があり、交渉しだいでは入国出来たのですが、華子に知りようも有りません。
最悪の方向に旅立つ華子でした。
歩き難い森の中、幸い靴は仕事用のスニーカーです、お洒落な革靴で無かったのは、せめてもの救いでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます