第23話 ウミベ町に異変

 なだらかな下り坂、スロットル戻しユックリ走行です。

 若い頃はチェンジNニュートラルに入れ、エンジン切ってガソリンケチリ走行やってたけど、この年になると無謀は避けたい。


「あれっ?」

「あぁ」

「デッカイたこだな」

「あんなにデカかったら、美味しくないかも」

「サイちゃんブレないねぇ!あんなの食べんでも蛸足インベントリー収納してるでしょ!」


「それとは別よ!異世界の巨大蛸、どんな味か気になるでしょ?」

「「食いたくねぇ!!」」


 と、言っている内に、ウミベ町に到着。

 ウミベ町は静まり返り、人っ子一人見当たらず、無人の集落かと思われる静寂です。





「ダメだわ、あれ子育て中、刺激与えないで、卵が孵るの待つしか無いよ」

「えっ?サイちゃん、どう言う事?」

「蛸ってね、雄と雌が生涯最後にたった一度SEXして、雄は力尽きて死んで、雌は産卵、卵が孵化するまで子育てして、死んじゃうの」


「孵化するの、どれくらい?」

「マダコっぽいから、一月位かな、冷たい海のミズダコなら半年以上だよ」


「身体が大きいから、入江のこんな場所しか子育てする所、無かったんでしょう」

「退治しないの?」

「生涯最後の大仕事、邪魔は可哀想だよ」

「サイちゃんらしくねぇな!」






「もし!旅のお方···食べ物お持ちなら、わけてはもらえませぬか?」


 背後から突然声を掛けられ、驚きました。


「ビックリした!!村人避難して無人かと思ってた!」

「儂の判断ミスで、避難する元気も食糧も無くなったですじゃ」


 放っておけば、直ぐにどこかに移動すると思い、刺激しないよう待ってたそうで、30日以上居座られ、食糧が無くなり、移住を決意した時には、動く元気が無くなっていたそう。


 海岸から離れた広場で、豚バラと野菜のバーベキューと、お好み焼きの緊急炊き出しを、3人で実施しました。


「「「旨い!!」」」「「「こんな旨い物、始めて食った!!!」」」

 魚醤が有る村、砂糖醤油味の焼き肉に、中濃ソース掛けたお好み焼き、私達でも普通に美味しい、この世界の人達はこの世の物と思えない美味でしょう。

 同情して、やり過ぎたかしら?


 コピー食料だから良いけど、むちゃくちゃ食べるよね!

 日が暮れるまで炊き出しは続き、その夜は村長の家に泊まる事になりました。


 夜が明けて、大蛸の様子を見ると、孵化が全て終ったのか、力尽きて死んでました。


 死骸を放置する訳にゆかず、取り合えず収納しました。

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