第16話 領主の使い

 食事も不味い、掃除が行き届いていない、ただ広いだけの部屋、これで高級宿とは、この世界の宿屋の質、察しがついたわ。


 固いパンに、肉や野菜が豊富に入ってるけど、雑味の多いスープが朝食でした。

 灰汁あく取りを、全くしていない調理だね。


 60年前、食料事情の悪かった日本、当時でも乏しい食材で、もっと美味しい食事してた。

 お味噌汁は、出汁昆布と出汁ジャコで、お祖母ちゃんが毎朝丁寧に作ってくれてた。

 普通朝食は、ご飯と味噌汁お漬物だけだったけど、スゴく美味しかった。


「あっ!生味噌タイプ、インスタント味噌汁持ってた」

「サイちゃん、突然どうした?」

「今夜は厨房借りて、私が料理作るよ!」

「それ良いね!翼竜のドラゴンステーキ食いてぇ!!」

 食事を不味く感じていたのでしょう、二人の目が輝いてる。


 一晩寝て落ち着いたのか、殺人の後遺症らしきものは感じられません。





「こちらに、異国の自由民様が、お泊まりなっていらっしゃるとか、私は領主様の使いで御座います」


 女将に話し掛けてる、じいさんがみえます。

「何か面倒な事になりそうよ」



 女将が、使いの老人を連れてきました。

「お食事中失礼します。

 わたくしハジマ士爵の執事長を務めます、ロイドと申します。

 あるじが自由民様を是非屋敷に御招待したいと、申しております、自由民様の御都合が宜しければ、今夕御迎えに御伺い致します」


 貴族なら、相手を即呼びつけるもの。

 御伺いをたて、相手の都合を聞き、改めて迎えに来る、まどろっこしい手順をなぜ踏むか。


 貴族家当主の使いが、こうもへりくだる訳は、士爵、准男爵等の一代限りの貴族子女は自由民になれない。

 自由民は、男爵以上の子女で無いと名乗れない訳で、准男爵扱いである。

 従って士爵である当主より、私達の方が身分が上と言うこと。


「翼竜のお肉を土産に、お伺い致します」

「ご訪問了承、有り難う御座います。

 お噂は聞き及んでおります、巨大な翼竜を討伐されたそうで、

 主にその旨伝えて置きます、御迎えはいつ頃に致しましょう?」


「そうね、昼過ぎにこの場所にお願い」

「承知致しました、ではこれで失礼致します」



「サイちゃん、スゲェ!受け答え堂にいってる!!」

「雑誌記事のインタビューや、ファンの受け答え程度よ、この位意識しないで出来ないと、タレントなんかやって行けないよ」




 ハンターギルドに出向き、依頼内容の説明をリズさんから受けました。

 それから討伐証明部位や、採取薬草の説明を受けましたが、覚えきれない内容でした。

(鑑定で何とかなるでしょ)



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