第60話 歓喜天の祟り―其ノ伍
お栄は自分が放った
「あのさ、女陰の
「………」
「淫らだけじゃ駄目なんだよ。もう少し艶っぽいというか、艶麗な感じを恥毛に
歯に
天具帖とは、下絵用の極上美濃紙である。
英泉の手のふるえを見て、お栄は「しまった。言い過ぎちまった」と、内心
さりながら、自分の
が、おかしなことに「てやんでえ」どころか、ウンともスンともなのだ。
――どうした、どうした、善の字。早く、わたいを謝らせておくれよ。
口が過ぎたことに気が
ところが、じれったいことに、なかなか
ややあって、英泉はお栄の
「お栄さん、じゃァ、拝ませておくんなせえ」
「えっ?」
「失礼ながら、向学のために
「……!」
お栄は息を呑み、英泉の二皮眼の奥を覗きこんだ。
その双眸には、いつしか熱い
英泉が抑えたような静かな声で言う。
「女の玉門に四十八の
わたいの胸の中で
わたいは、自分でつけた炎に茫然と見蕩れた。
英泉の赤い炎のような舌がちろちろと動いて、言葉を吐き出す。
「たしかに女郎の玉門は飽きるほど見ておりやす。でも、毛切り石や線香なんぞで
目の前の春画描きが、男にしては長い
そう言えば、英泉は素人の女には一切手をつけず、
あのとき、英泉は業火に包まれていた。狂ったように燃え熾る業火に包まれていた。それは、おのが自身をも焼き尽くす一途一念の豪勢な金銀、緋色の炎だ。わたいの胸の鼓動が、
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