第45話 夜鷹図の女―其ノ漆
北斎は勝川派を破門され、食うや食わずの貧乏暮らしをしていた。そうした日々の中でも、諸派諸流の画法を貪欲に吸収し、
まさにここが正念場と張り切る北斎に、お辰がはっぱをかける。
「時ちゃん、いまが勝負どきだよ。
気性の烈しい反面、
宗理型の美人画は、柳腰のすらりとした姿態、撫で肩の楚々とした風情、品のよい瓜実顔を特徴とし、歌麿や豊国の美人画とは一線を画するものであった。
北斎の
この頃の最高傑作「夜鷹図の女」が、お辰の姿を写し取ったものであることは言うまでもない。
お辰は自分を
北斎はやっと世に躍り出た。
お辰と所帯を持つために、手狭な横網町の棟割長屋を出て、浅草
続き間のある屋内を見渡して、お辰は「うれしいよ。時ちゃん」と、滅法界、倖せそうに顔をほころばせた。松坂町の親戚(幕府御用
しかし、好事魔多し。無常の風は時を
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