第44話 夜鷹図の女―其ノ陸
お辰に抱きつかれながら、北斎は本所
あの頃、お辰とは本当の兄妹のように仲がよかった――。
お辰は
そのお辰といつも連れ立っているものだから、近所のませた餓鬼どもから、しばしば「
お辰が吉田町の親戚に貰われてからは疎遠になったものの、あの当時のことを思い出すと、北斎の胸にはいまでも甘酸っぱいものがこみ上げる。そうした淡い感情をお辰も抱きつづけていたのであろうか。
二人が
以来、お辰は北斎の長屋に、三日にあげずに通ってくるようになった。
この頃から、北斎は独自の美人画を模索しつづけた。
北斎は、狩野派の
俵屋
しかしながら、百琳斎は私淑すること数年してみまかった。北斎が二代目俵屋宗理を襲名したのはこのときである。
「
お辰をおのれの前に据えて、その姿を写し取りながら、北斎は白い
――そうだ。心眼だ。
画工としての念を一心に燃やす北斎の視線の先には、二人の男がいた。それが、いまをときめく喜多川歌麿(勇助)と初代の歌川豊国(熊吉)であった。
当時、この二人の美人画は世間で持て
――少し先は越されたが、いずれ追いつき、追い抜いてみせる。このオイラが、勇助や熊なんかに負けてたまるもんかい。
北斎は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます