第37話 勝川派破門―其ノ参
「他派の絵を真似るうつけ者!」
と、北斎は
それまでは師匠の春章から可愛がられ、また勝川派の看板を背負っていたこともあり、さまざまな錦絵や黄表紙、洒落本の挿絵仕事などにありつけた。
しかし、破門されたことにより、もはや春朗という画号は使えない。兄弟子たちの手がまわっているのか、馴染みの
仕事はない。銭はない。
やむなく柱暦、唐辛子、
そんなある日、神田明神下の
「なんでえ、なんでえ」
と、人だかりを搔き分けて前へ出た途端、北斎は「うっ」と息を呑んだ。
間口二間の見世座敷に、並べられたものは、大判黒
描かれた役者たちが、いまにも紙から飛び出してきて、動き出しそうな緊張感が胸にぐわっと迫ってくる。
――すげえ、どこのどいつの絵なんだ。
思わずその大首絵を手に取り、絵の端に目を走らせれば、
――写楽なんて名は聞いたこともねえ。
板元はどこだ、と落款の下を見ると、蔦屋重三郎の「山形に蔦」紋。
この当時、蔦重は、寛政の布令による筆禍をこうむり、
蔦重の悲劇はさらに重なった。
手塩にかけて人気絵師に育てた喜多川歌麿に見限られたのだ。まさに
しかし、いかに弱り目に
その意地の噴出が、この写楽の役者絵であった。
三代目
従来の役者絵にはない迫力、途方もない力感の
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