第33話 山谷堀有情―其ノ参
名妓「堀の小万」の
治郷は
また、武家でありながら、五代目市川團十郎、人気
治郷の
小万はお
しかも酒にやたら強く、呑みっぷりがいい。小万の人気はいやが上にも高まり、江戸随一の名妓としてもてはやされた。
そして、小万三十五歳になった頃であった。
まだまだ
こうした小万の小気味のよさは、同じ山谷堀に生きるお富司にも脈打っている。
何事にも勘が働き、察しのいいお富司は、お栄の姿を目にしたときから、彼女の足元の異変に気づいていた。
お富司はお栄の鼻緒を見た瞬間、かなりの距離を歩いてここまで来たのだと、敏感に読み取り、
「何やらお疲れの様子にござんすね。ここで立ち話もなんですから、ささ、こちらへお運びなさって、一服つけて下さいましよ」
お富司は見世の奥へとお栄を導いた。
客で立て込む小上がりの前を突っ切れば、帳場裏に小さな座敷がある。そこは、お内儀の休憩用の小部屋で、上等の座布団と
座敷に上がったお栄の背に、お富司が声をかける。
「お
お栄がすきっ腹を抱えていることも、お富司にはお見通しなのだ。
「突然、すみませんねえ」
お栄が頬笑んでうなづくと、お富司は、たまたま座敷の前を通りかかった
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