第32話 山谷堀有情―其ノ弐
藤屋の暖簾をくぐると、お栄の耳に階上から三味の音が押し寄せてきた。酒宴の騒がしさに加え、
藤屋は
「おやまっ、お
藤屋のお
お富司は、
「お内儀さん、いつもお綺麗ですこと。男衆にとっては、さぞや目の毒気の毒、困り
「先生、
お栄の
船宿のお内儀は、
ときには辰巳仕込みの
文化年間(一八〇四~一八一八)のこの当時、ここ山谷堀に美貌と
「堀の
小万は、浅草いろは長屋に住む
十六歳で小万と名乗り、売り出したものの、美人過ぎる面立ちが
ある日、料亭の八百善によばれた小万がそれを酒席でかこつと、客の大田
詩は
詩仏は大窪詩仏、米庵は市川米庵、狂歌之公とは南畝自身を指す。八百善を含んで、いずれも江戸の一流ばかり。
当時、第一級の文人として盛名を轟かせていた南畝の狂歌や戯文は、一筆何十両もの値打ちがあったという。その南畝の直筆で、一流芸妓としての折り紙がつけられたのだ。小万の名は、一躍、江戸の巷に知れ渡った。
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