第24話 過去への猪牙舟―其ノ肆
猪牙舟が
猪牙舟はさらに
お栄は莨をくゆらしながら、ぼんやりと物思いに
何ももの言わぬお栄に、船頭が行く先を確かめるように訊ねる。
「お客さん、
「ああ、そこでいいよ。わたいの
「へい、
船頭は安心したのか、一段と舟足を速めるように
頭上に巨大な吾妻橋の橋桁が覆いかぶさってきたとき、ふっと脈絡もなしに、お栄の胸に馬琴の死に顔がよみがえってきた。
顔に
馬琴の顔に白い布をかぶせ戻しながら、お栄はつくづく「お父っつぁんの言うとおりだ」と思った。
こうも安らかな死に顔とならなかったのは、いまわの
お栄は北斎から聞いた話を思い出した。それは、馬琴の日常についてのものであるが、かくのごとき凄まじいものであった。
「あいつが伊勢屋とかいう変哲もない下駄屋の
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