一日目 午後②

第22話 アカギカズヤ

アカギはいつの間にか閉館時間が過ぎていることに気が付いた。

だが、何のアナウンスもないことに違和感を覚えた。

そう言えば、最後に高校生くらいの女に自分の作った最高傑作の『BJX-02z』を吹きかけてから誰とも会っていない。

こんなに狭い施設でそんなことが起こりうるのだろうかと、少し考えて人気のない施設だったのだろうと結論付けた。

そろそろ場所を変えようかと思っていた時、一階に人影があることに気が付いた。

全身スポーツウェアでゴーグルとマスクとキャップを被った男だった。

アカギは何故かその男に睨みつけられていた。

バレないように犯行を重ねてきたはずなので、アカギが『BJX-02z』を使用した証拠はどこにも残っていない、そう思っていた。

だが、そうでないとするならば、相手は『警察』しか考えられない。

やっと俺に気づいたか…。

アカギは口元が緩むのを感じた。

ワザとらしく、その男に尋ねる。

「変わった格好ですね、何かスポーツでもされていらっしゃるんですか?」

男は答える。

「ちょっと、フィットネスでもやってみようかと思って。」

そう言うと、アカギに向かって突っ込んできた。

ハイキックがアカギに向かって飛んできた。

人生でハイキックを食らったことなんて一度もないアカギは少し驚いた。

だが、動じることなくリュックから『BJX-02z』を取り出す。

時間が経った所為せいか三角フラスコの上部は緑色に変色し始めていた。

だが、スプレーの管は赤い部分のところに届いている。

吹きかけてしまえば俺の勝ちだ。

アカギはそう思っていた。

いつものように、顔に向けてスプレーを噴霧した。

しかし、ゴーグルに阻まれてうまく目に『BJX-02z』が入らなかった。

しかし、少しだけだが、右手の甲に『BJX-02z』をかけることができた。

即効性はないが、時間をかければこれだけでも十分変異させることができると判断したアカギは引き返すように図書室に逃げ込むのだった。

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