第20話 物資供給

シノハラ巡査部長は、スギモトへの物資運搬の役目を買って出た。

顔が分かるのが自分しかいないと思ったからだ。

要求された無線機以外に、役に立つかどうかは分からないがキャップ、ゴーグル、マスクを渡すことにした。

本当ならば防護服を渡したいところだったが、防護服では犯人ともみ合ったときに身動きがとりづらくなってしまう。

ならばせめて粘膜だけでも守れた方がいいと思った。

あくまでも、これはシノハラの勘だった。

スギモト巡査部長の電話に連絡を入れると、今朝会った時のような元気そうな声が返ってきた。

どうやらまだ参ってはいないようだった。

とは言え、民間人まではそうとは言えない。

なるべく早く解決することが重要だとシノハラは思った。

物資は、入口までシノハラが運搬することで話がついた。

出たがっている民間人が数名いるらしいことが分かった。

シノハラは事件解決まで隔離するという条件でそれを受け入れてもよいのではないかと思った。

だが、スギモトはそれを許さなかった。

パンデミックを恐れてのことらしかった。

シノハラが入口についたとき、扉には鍵がかかっていた。

ノックするとスギモトが扉を少しだけ開いたので物資を渡すと、少しだけスギモトがほほ笑んだように見えた。

「頑張れよ」

一言だけそう伝えると、スギモトは頷きまた鍵をかけた。

スギモトの背中越しにゴーグル、マスク、キャップをつける姿が見えた。

それ以上はシノハラには祈ることしか出来なかった。

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