第14話 サナギ

電話を切ると、今までと違う空気のようなものを感じるようになった気がした。

普通のこじんまりした植物園だと思っていたが、どこか異様な雰囲気を感じ始めた気がした。

犯人の容貌も知らない丸腰の自分が置かれている状況に身震いがした。

一周数分でまわれる園内が広く感じられた。

先ほどまで何も感じていなかったことに恐怖を覚えた。

そこで、俺が知っている情報をまとめてみることにした。

1. バイオテロを起こそうとしている犯人がこの植物園に潜伏している

2. 犯人は何らかの生物兵器を所持している

3. 人数、容貌は不明

4. 犯人を確保後、建物外に連れ出す

せめて人数と容貌くらいは教えてくれてもよかったのに…。

まぁ、何かあったらまた電話くれるだろう。

そう思いながら、少し前に通りかかった椅子を見ると見たこともない大きさのサナギがあるのを発見した。

小さな子供くらいの大きさのサナギは俺の知る限り、この世のものではない。

もしかするとテロと関連するかもしれない。

だが、こんなにデカいサナギは正直気持ちが悪かった。

前にテレビで見たが、芋虫がサナギになるとき、中ではいったんどろどろの液体の状態になるらしい。

それを知ってから、俺は蝶が嫌いになった。

もしこのサナギが変態をしようとしているとしたならば、中身は想像したくない…。

その時、一人の女性とぶつかった。

「息子を、タケルを知りませんか?」

少し、常軌を逸しているように見えた。

「奥さん、タケル君とはどこで離れたんですか?

 あ、非番で手帳持ってないんですけど一応警官です。」

管轄も違うんだけどな…。心の中で付け加えた。

その言葉で少し冷静になった女性は、お手洗いに行っているうちに見当たらなくなったこと、建物の外には出ていないこと、このサナギあるの場所でタケル君が待っていたことなどを教えてくれた。

俺は、それを聞いて今回のテロリストが作ったとされる新種の生物兵器の正体に検討をつけてみた。

おそらくだが、このサナギはタケル君のはずだ。

だが、それをこの女性に伝えてよいものか…。

サナギから出てきたタケル君の姿がどうなっているのか想像もつかない。

仮面ライダーの敵みたいな姿になって出てくる可能性だってある。

だが、今サナギを割ってしまうとどろどろになったタケル君が出てくる可能性が高い。

ここは羽化するまで待つしかない。

そう思った。

女性には、受付の近くで待つように伝えると、俺はタケル君の羽化を待つことにした。

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