第10話 第一の犯行

アカギカズヤはイラついていた。

世の中全てにだ。

自分の発明した細菌兵器を誰も認めようとしなかったからだけではない。

それを必要としない世の中にイラついていた。

確かに、自分の発明した細菌兵器は大量に人をあやめることのできるものではなかった。

だが、死を恐れない兵士を作ることができるものだと自負していた。

しかし、実際に取引を行おうとした相手に出された答えはノーだった。

こんなに素晴らしいものはないというのに、だ。

それで、アカギは今日警察に電話をかけた。

それなのに、まだ警察らしい人物から声すらかけられていなかった。

「日本の警察は腑抜けてやがるぜ」

自分を逮捕できないようなこの国にも絶望していた。

アカギはあてもなくバスにのり、とある植物園についた。

場所はどこでもよかった。

自分の発明した細菌兵器を試すことができるのであれば。

ちょうど目の前に子供が椅子に腰かけていた。

「ぼく、お母さんはどうしたの?」

アカギはその子供に話しかけた。

「おトイレに行ってるの。」

アカギは心の中で大笑いしながら、子供に話し続けた。

「じゃあ、おじさんが一緒に待ってあげようね。」

嬉しそうに子供がアカギを見上げた。

その瞬間、アカギは自分の生み出した最高傑作である細菌兵器をその子供に向けて噴霧した。

そして、その場を後にするのだった。

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