第6話 NHT報道局

午前10時50分。

NHT(日本放送テレビジョン)の報道局内はにわかに騒めいていた。

警察の動きを察知した記者の一人が情報を持ち帰ったからだ。

ただし、まだ報道規制が入っている情報なので迂闊に取り扱うことができない。

「新種の細菌兵器って本当なのかしら。」

女性アナウンサーのコンノミドリは不安をあらわにしていた。

「まだいたずらの可能性もあるらしいから、むやみに心配しなくてもいいと思うよ」

コンノの先輩でもあるワタナベアナウンサーは笑顔でそう答えた。

だが、犯人がシブヤにいる可能性があるというのは気持ちの良いものではない。

もし、実際に細菌兵器が存在し、それを使ったテロが起ころうものなら、世界で日本は孤立することになる。

この情報を発信するには警察の報道規制が解除されてからでなくてはならない。

報道に携わるものとして、この危機が現実のものになった場合のことも考えておかなければならない…と、ワタナベは密かに思うのだった。

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