第5話 テロ対策会議

午前10時30分。

テロ対策会議は急遽開催された。

情報が入って30分程での会議は本当に稀なケースだった。

それだけこの事案が緊急性の高いものだったのである。

ヨコヤマは椅子から立ち上がると、全員の顔を見渡してこう言った。

「聞けば今回のホシは新種の細菌兵器をばら撒こうとしているらしい。場所もまだ特定できていない。だが、このテロは我々が全力で阻止するぞ。」

それぞれの署員たちも同じ思いだった。

「では、状況報告。」

ヨコヤマは椅子に座るとそう声を上げた。

その声を聴いた各署員たちが順番に報告を上げていく。

「生活安全課に入電。午前9時58分。ボイスチェンジャーで声を変えていた模様。」

「逆探知でシブヤ駅前の公衆電話からの電話だった模様です。」

「現在シブヤ駅前交番および、その近隣の交番にて公衆電話付近の監視カメラに怪しい人物が映っていないかを確認している最中です。」

「23区内の非番の警察官も含めて応援を求めています。」

報告を聞いたヨコヤマは続けて声を上げる。

「では、まずはホシの特定と散布場所の特定を急げ。今日は日曜日だ。シブヤの人通りも多い。一人も犠牲者を出さないつもりで各自考えて行動しろ。では、解散!」

ヨコヤマにとっても長い一日になりそうな気配を感じながら、パイプ椅子に深く腰を掛けなおすと、また万年筆をトントンとし始めるのだった。

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