第4話 シブヤ駅前交番

本庁からシブヤ駅前の公衆電話から不審な電話がかかったという連絡が届いたのは、午前10時20分のことだった。

シノハラ巡査部長は、駅前で自転車に乗っている男を呼び止めている最中だった。

「ちょっと、君!危ないから降りなさい。」

呼び止められた男は、すんなりということを聞いた。

「あ、すみません。」

聞くと、この自転車男は警察官らしかった。

「自分、マチダ署管轄の交番勤務しているスギモト巡査部長です。」

「マチダ?そんなところから自転車できたのか?何時間位こいできたんだ?」

相手が警察官だとわかったことでつい、好奇心で聞いてしまった。

「それが目的地を決めないで来たので、覚えてないんですよね。チガサキの方まで行くこともあるので、それに比べると全然こいでないですけどね。」

あっけらかんと答えるスギモト巡査部長をみて、少しあきれていた時だった。

交番の方からタケダ巡査が走ってくるのが見えた。

「じゃあ、危ないから人込みでは自転車に乗らないようにね。」

シノハラはそう言ってタケダの方へ向かうと、何故かスギモトも自転車を押しながらついてきた。

「ちょっと、もう用は済んだんだから帰って!せっかくの非番でしょ!」

「そうなんですけど、何か喉乾いちゃって。お茶でも出してくださいよ。」

シノハラは呆れて言葉を失ってしまった。

そのとき、タケダが近くまでやってきてシノハラとスギモトの顔を交互に見ていた。

シノハラが、

「大丈夫だ、管轄違いだが彼も警察官らしいから。」

と言うと、タケダがとんでもないことを言い出した。

「大変です。本庁から連絡が来たんですが、バイオテロの犯人がこの近くにいるらしいんです。」

シノハラは顔つきを変えると、スギモトに向き直った。

「アンタが23区内の交番勤務じゃなくてよかったな。」

「これはお茶どころじゃなくなったな。」

スギモトもそう言うと、自転車を押してスクランブル交差点の方へ消えていくのだった。

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